すぐ役立つような戦術を紹介したい。

△88角成と角交換されたとき、多くは▲同銀と取るが、局面によっては▲同金が勝るケースがある。そのケースについて見ていきたい。

ケース1 相掛かり▲38銀保留型

手順 △34歩▲24歩△同歩▲同飛△88角成▲同金△33角▲21飛成△88角成▲68角。

図は▲38銀を保留して▲36歩と突いた局面。一手でも早く▲37桂と跳ねようとする作戦だ。

▲36歩には△34歩が強い一手だ。以下▲24歩△同歩▲同飛に△88角成と角交換をする。

対して▲同銀は△33角▲21飛成△88角成で、もし▲59玉型なら▲同金△同飛成▲31竜△同金▲33角が王手竜取りで先手良しが定跡だ。しかし今回は▲58玉型。▲同金△同飛成が王手になり、後手良しになる。

▲58玉型の場合の切り返し方がある。△33角▲21飛成△88角成に▲68角が手筋だ。以下△82飛は▲88金△同飛成が王手にならないので、▲31竜△同金▲33角で先手良しになる。

だが、▲68角にも続きがある。△22馬▲同竜△89飛成とすれば後手良しなのだ。▲11竜は△78竜と金を取られるし、▲79金と当てても△同竜▲31竜△同金▲79角△78金で角が詰む。

△22馬には▲31竜△同金▲86角△99馬の進行が勝るが、次に△89馬が残っていて先手不満だろう。

戻って、△88角成に▲同金と応じれば△33角は成立しない。△33角には▲21飛成△88角成▲68角として、△87飛成は▲88銀△同竜▲31竜△同金▲33角で先手良し。

▲68角に△22馬は、▲同竜△89飛成▲11竜で先手良しだ。このとき▲88同金と取った効果で、▲79銀に紐がついているので取られない。この変化のために▲88同金と取っている。

▲88同金には△22歩が勝り、▲34飛に△42玉か△41玉から駒組してこれからの将棋だ。

▲88同金は異形だが、理屈が分かれば納得できる。

ケース2 横歩取り △26歩に▲37桂の変化

手順 ▲37桂△27歩成▲83歩△同飛▲84歩△82飛▲45桂△88角成▲同金△52金▲56角△33歩▲同桂成△同金▲83歩成△62飛▲84飛△82歩▲92と△44桂▲81と△56桂▲同歩△37と▲28歩。

後手が△26歩と垂らした局面。対して▲38金や▲28歩と受ける手もあるところ。△27歩成を受けずに▲37桂と跳ねるのは積極的な一手だ。

▲37桂△27歩成▲83歩に△52飛の変化を警戒するなら、▲83歩△同飛としてから▲37桂が有力だが、その場合は▲37桂に△88角成▲同金△33桂と変化される可能性があるので一長一短だ。

▲37桂△27歩成▲83歩△同飛▲84歩△82飛▲45桂△88角成に▲同金と応じるのが工夫の取り方。効果は最終図で分かる。

△37とに▲28歩と打って△27角を防ぐ。このとき▲88同銀と応じていると、△47と▲同玉△69角で後手良しになる。

最終図以下、△24角▲同飛△同金▲46角が一例で難解。形勢不明だが、先手玉が怖い格好なので、現状は△26歩に▲38金が有力視されている

ケース3 横歩取り △52玉型の△26歩

手順 ▲38銀△27歩成▲同銀△88角成▲同金△55角▲77角△76飛▲55角△79飛成▲68角。

次は△52玉型で△26歩と垂らしたケースだ。▲38銀の受けに△27歩成▲同銀△88角成と攻める。

対して▲同銀△55角▲77角なら△76飛とする作戦だ。▲55角は△78飛成が厳しい。△55角には▲87銀が勝り、△同飛成▲同金△99角成▲23歩の進行も先手まずまずとされている。

今回紹介するのは、▲88同金と応じる指し方だ。これなら△55角には、▲77角△76飛▲55角△79飛成▲68角としてはっきり先手指せる。▲88同金と取った効果で、△78飛成ではなく△79飛成になっている。

ケース4 横歩取り 青野流

手順 △88角成▲同金△28角▲23歩△同歩▲22歩△同金▲77角△76飛▲22角成△79飛成▲69金。

図では△74歩と駒組するのもあるところ。△88角成に対して▲同銀は△28角で、▲23歩△同歩▲22歩の攻めに△同金と対応され、▲77角△76飛▲22角成は△78飛成▲68金△89竜で後手良しだ。

▲23歩に代えて▲32飛成△同玉▲29金もあるが、△37角成▲同銀△76飛▲77銀△74飛で、駒損だが後手に楽しみが多い将棋だ。

△88角成に▲88同金と応じるのが先手の工夫。これなら△28角の打ち込みに、▲23歩△同歩▲22歩△同金▲77角△76飛▲22角成△79飛成▲69金と受けて先手良し。

▲88同金と応じる効果は、ケース3と同じく、△78飛成ではなく△79飛成にさせる意図があった。

ケース5 横歩取り △86歩からの動き

手順 △86歩▲同歩△同飛▲35歩△88飛成▲同金△55角打▲77桂。

▲36歩と突いた局面だ。先手の飛車の横利きがなくなったので、△86歩から動いていく。

▲同歩△同飛▲35歩に、△88飛成と攻め込む。

対して▲同銀も考えられるが、△55角打▲77桂△87歩▲同金△86歩▲同金△77角成と進むと、先手の金が負担になっている。△87歩▲同金で、8筋の金銀を負担にさせてから△19角成とする順も有力だ。

△55角打に▲77銀とすれば△87歩の攻めはないが、△19角成▲37桂と進んだとき、次に▲45桂ー▲65桂と跳ねる楽しみがない。

△88飛成に▲同金とする取り方がある。△55角打に▲77桂と跳ね、△同角成▲同金△同角成には▲68銀と上がって先手陣が引き締まる。▲77桂に△19角成も▲37桂としておいて、▲88同銀△55角打▲77桂△87歩▲同金△19角成の変化と比べて、7筋8筋の金銀が先手玉に近い分、先手が得している。

▲88同金と取るケースを見てきたが、意味合いが少しずつ違う。▲88同金と取る場合は、事前に研究で裏付けをしておく場合がほとんどだ。

知らない局面になったとき、読みで▲88同金の方が良い、と判断できたらすごい。

▲88同銀と取るという先入観を捨てて、△88角成の局面で立ち止まる勇気も実戦では求められそうだ。

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