千葉県のアマチュア棋界は、転出入はありつつも徐々に層が厚くなっている印象だ。特に最近は充実著しい方が多く、関東エリアの中でもトップクラスの激戦区になっていると思う。今回紹介する1回戦のお相手も、アマ名人の経験もある強豪で長く活躍されている。

実はこのお相手には先日のアマ竜王戦でも当たっており、その時は三間飛車に振って惨敗した。そのことを某H.Y氏に話すと「居飛車でいった方がいいっすよ」というありがたいお言葉をいただいたので、先手番を引いた本局は、力強く▲26歩と突いてスタートした。

以下、一手損角換わりからの腰掛け銀に対して棒銀に構え、少年時代に習った筋で攻め込んでいく。
お相手も私の居飛車に面食らったか、明らかに反撃の形が間に合っていない。作戦勝ちの上といったところだ。さすがH.Yさん、的確なアドバイスである。

更にここからも冴えた指し回しで優位を拡大していく(自画自賛)

手なりに進めて攻めは成功なのだが、△46銀は実戦的にイヤな1手。▲同金△同角は成香に当たってきて厄介だし、▲38金には△47銀成や△57銀成と突撃されて受けになっていない。しかし、この勝負手に対しても、私は▲56桂の解答を用意していた。

△55角は利かされで逃げ切れなかったか、△37銀不成と突っ込んできたが、▲15角が狙いの王手。この瞬間なら△52玉には▲64桂が王手になるので△43玉は致し方ないが、▲24歩が間に合う形になってハッキリ優勢である。ところがこの後がいけない。

▲12歩がとんでもない緩手。△16金で角が詰むのを完全に見落としていた。正直なところ、苦手としていた相手に勝てそうになって浮足立っていた。

どうやら優位が消し飛んだらしいな、ということを理解するまでに少し時間が掛かった。秒読みギリギリまで考えてリカバリー策を探す。▲41銀と踏み込んだのは良かったが、▲32銀打はやや無理筋だった。▲22成香と捨てて△同金には▲12との組み立てなら、まだ難しかったようだが、最後の▲12とが見えずに断念してしまった。

以下は駒得をキープしつつ余されて負け。感想戦では終盤にチャンスがなかったかと食い下がってしまったが、後から見るとどう考えても足りない。リアルの将棋では、前のめりになりすぎて局面を客観視できないことがあるのが課題だ。

追記:熱が冷めてしまう前に
いつもは敗退するとすぐに帰ってしまうのだが、窓側で凄まじい気迫を感じる1局が目に留まった。両者共に盤上没我といった雰囲気で、ギャラリーが至近距離で狭そうにたむろしているが、全く意に介する様子はない。

終盤の入口、片方は厚みを活かしてギリギリの利かしを連発し、相手方は低い陣形が押しつぶされていく間に、横からの攻めを間に合わせたいという攻防だ。手抜くか、あるいは面倒を見るか。攻めるにしてもどう攻めるのか。30秒将棋の中、延々と選択を迫られる時間が続く。29秒まで読まれて際どく決断したかと思えば、本当に通したい勝負手、相手の読みにないと見込んだ手は間髪入れずに叩きつける。

最終盤、受けなしに追い込まれた側が数通りある王手ラッシュをギリギリまで比較するときの緊迫した空気。最後の猛攻を凌いだ側が、相手玉の詰み手順を確認し、その作業が終わったことを感じさせる弛緩した空気。激戦が終了した後特有の重たい沈黙と掠れた声。その空気感のすべてに覚えがあることに気が付いた。

盤側を離れ、隣で観戦していた友人と「今の将棋はおもしろかったね」「これがアマチュアの将棋だよな」という会話をした。最近の私はどちらかというと正確に指すことに重きを置いているし、それが自分には向いているとも思っているのだが、忘れていた熱を思い出させてもらったような気になった。

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