主流の後手の対策 テーマ図①
手順 △14歩。
先手矢倉に対して、△52玉ー△81飛と下段飛車に構え、バランス重視で戦うのがよくある後手の対策だ。
テーマ図に至るまでの手順はこちらで検討した。
△14歩に▲35歩△同歩▲46銀とする変化はこちらから。
△14歩に▲79玉と寄る変化はこちらから。
△14歩に▲16歩と受ける変化はこちら。
後手の対策がかなり整備されたが、先手の攻め方も整備された。例えば△14歩に▲35歩△同歩▲46銀と仕掛ける変化は終盤まで研究できる。
△14歩▲16歩の交換を入れてから△54銀としたいが、△14歩に▲35歩△同歩▲46銀の変化が怖い。
△14歩▲16歩の交換を入れず、単に△54銀とすれば先手の仕掛けを回避できるが、後からだと1筋の交換が入りづらいので、後手が妥協した感もある。
後手がカニ囲いに組む対策 テーマ図②
もう一つの後手の対策を見ていきたい。カニ囲いに組む変化だ。
△65桂や△55歩の仕掛けを含みに先手陣を牽制し、▲37銀を見たら△44歩から雁木に組む意図だ。
テーマ図からいくつか分岐する。
▲79玉の変化
手順 ▲79玉△63金▲37銀△65桂▲66銀△75歩▲同歩△73銀。
図から▲58金は、△55歩▲同歩△同角▲37銀△33角としておいて、次に△65桂▲66銀△56歩を狙う。
▲79玉に△55歩▲同歩△同角なら▲37銀△33角▲46銀として、今度△65桂▲66銀△56歩には▲58歩と受けることができる。こうなると後手がつまらない。
▲79玉に△63金が工夫の一手。以下▲37銀に△65桂と仕掛ける。
▲66銀に△75歩▲同歩△73銀(単に△73銀もある)と銀を繰り出す。△63銀ではなく△63金としたのは、この△73銀を指したかったからだ。
最終図。後手は次に△84銀から△75銀、または△84銀から△72飛を狙っている。先手の▲46銀ー▲35歩の攻めよりも後手の攻めが早く、後手が主導権を握っている。
▲37銀を見たら△44歩から雁木
手順 ▲37銀△44歩▲58金△43銀▲79玉△14歩▲96歩△94歩▲16歩△63銀。
▲37銀に△55歩▲同歩△同角は、▲24歩△同歩▲25歩が嫌。
▲37銀に△63金は、▲46銀△65桂▲66銀△73銀に▲45銀△33銀▲35歩で先手ペース。▲37銀と上がっているので先手は反撃しやすい。
▲37銀を見たら△44歩から雁木を目指す。戦いになると▲37銀が生きるので、持久戦にして▲37銀を負担にしようとする意図だ。
最終図は後手不満ない。▲66歩ー▲67金右と組みたいが、▲66歩の瞬間に△65歩▲同歩△45歩から先攻できる。
▲37銀と上がったからには、先手は早めに▲35歩と仕掛ける展開にする方が勝りそうだ。
△44歩に▲35歩仕掛け
手順 ▲35歩△同歩▲46銀△36歩▲24歩△同歩▲同飛△23歩▲26飛△43金右▲36飛△33銀。
△44歩に▲58金と上がると△43銀で雁木が完成する。△43銀と上がられる前に▲35歩と仕掛けるのはどうか。
△35同歩▲46銀に△36歩と伸ばすのが手筋。▲35銀には△37歩成▲同桂△36歩が狙い筋だが、▲38金と上がられて意外と難しい。△36歩▲35銀に△33銀と上がる方が穏やかな展開になる。
△36歩▲24歩△同歩▲同飛△23歩▲26飛に対して、△43金右▲36飛△33銀と矢倉に組む。後手は雁木を目指していたが、矢倉の方が2筋を強化できるので柔軟に変えていく。
最終図、先手は歩を二枚手持ちにできたが、飛車の動きで手損している。先手後手ともに主張がある将棋だ。
▲35歩に△55歩と反撃する変化
手順 △55歩▲同歩△35歩▲46銀△45歩▲35銀△56歩。
△35同歩の他に、△55歩と反撃する変化も有力だ。
▲55同歩に△35歩▲46銀△45歩と反撃する。▲35銀に△56歩と垂らしてどうか。
最終図以下▲58飛△55角▲37歩△43銀▲56飛△22角(または△33角)が一例。後手は歩の損得よりも、形の良さと駒の効率で勝負する方針だ。
△56歩に代えて△43銀もあって、比較は難しい。
序盤の注意点
手順 △62銀。
後手がカニ囲いに組む変化を選ぶ場合、△72銀ではなく、△62銀と上がるのが重要だ。この方が後手玉に近いし、△53銀右と上がる含みがある。
「△72銀か△62銀か論争」は今も続く後手の課題だ。
△62銀以下、▲25歩△32金▲78金△64歩▲24歩△同歩▲同飛とする将棋に対しては、△72銀型が生きるケースが多い。
たとえば△72銀型には、△73桂ー△52玉ー△62金ー△81飛と、△63銀を省略して下段飛車を目指せるメリットがある。
テーマ図①を目指す場合は△72銀、テーマ図②を目指す場合は△62銀と上がるのが良いだろう。