テーマ図

今回△32銀型の雁木を検討したい。△43銀ー△32金の形を雁木と呼ぶので、△32銀型の雁木とは変な言い方だが、戦型としては雁木になるだろう。

△43銀を保留することで、先手の手に応じて△32銀のまま戦うのか、△43銀と組むのかを決める意図がある。△32銀型は陣形が低いので、▲37銀からの攻めに対応しやすい。この理屈は△32銀型の重要なポイントだ。

テーマ図で先手が▲78銀か▲88銀かで、このあとの変化が変わる。今回は▲88銀型をメインに検討したい。

△32銀型を指す上で知りたい理屈が2つある。まずはその点から見ていきたい。

▲25歩を決めてくれるかどうか

手順 △84歩▲46歩△43銀▲25歩△33角▲45歩。

△32銀型は先手が▲25歩を決めてくれないと組みづらい

▲25歩を保留すると、△84歩に▲46歩と突く手がある。次に▲45歩があるので△43銀と上がるが、▲25歩△33角▲45歩と仕掛けることができる。

最終図は先手持ちだ。

こちらの記事で詳しく検討した。

手順 △84歩▲68玉△85歩▲77角△32銀▲46歩△43銀▲25歩△32金▲24歩△同歩▲同飛△23歩▲28飛△62銀。

△32銀と上がる前に△84歩ー△85歩を決める、という工夫がある。△32銀と上がってから△84歩とする順で、▲46歩△85歩に▲77角なら合流するが、手抜いて▲45歩△86歩▲同歩△同飛▲78金とする変化がある。△32銀と上がる前に△85歩を決めておけば▲77角に限定できる。

ただ△85歩▲77角が入ったからといって、△43銀▲25歩に△33角は▲45歩の仕掛けが成立する。そこで後手は△33角と上がらずに△32金と上がる。

2筋の歩交換を許すが、代わりに△73銀ー△64銀と繰り出して▲77角を目標にする作戦だ。△85歩▲77角が入ったから△32金で妥協した、ということだ。

これは後手の作戦の一つで、一局の将棋だ。

通常の雁木 ▲58金右を省略される

通常の雁木に組むと、▲58金右を保留し▲37銀と繰り出すのが有力とされている作戦だ。

▲58金右よりも▲88銀を優先することで、8筋をケアしている。あと8筋から攻められたとき▲58玉と寄れる点も大きい。

▲58金右を保留する変化はこちらの記事で検討した。

▲58金右に代えて▲88銀だと△74歩は成立しないが、▲58金右だと△74歩はある。

△74歩を急ぐメリットについてはこちらの記事で検討した。

▲88銀に代えて▲58金右だと△54銀は成立しないが、▲88銀だと△54銀はある。

▲88銀に△54銀と上がる変化はこちらの記事で検討した。

どちらも一長一短ある。

▲88銀か▲58金右かの比較はあれど、△43銀型の雁木には▲37銀と繰り出す順が有力だ。この2つの理屈を踏まえた上でテーマ図に戻る。

▲37銀に△73銀の変化

手順 ▲37銀△73銀▲35歩△同歩▲46銀△45歩▲35銀△77角成▲同桂△75歩。

▲37銀に対する後手の対策を見ていきたい。▲37銀には△73銀と△73桂のいずれも有力だ。まずは△73銀の変化から。

▲35歩△同歩▲46銀と開戦すると、△45歩が良い反撃だ。▲同銀でも▲35銀でも△77角成で先手が困る。▲同銀は△86歩▲同歩△88歩▲同銀△55角だし、▲同桂は△75歩の桂頭攻めがある。最終図は後手指せる。

こういう展開になると△32銀型が生きているのがよく分かる。▲24歩△同歩▲同銀のような2筋からの攻めに強い。

手順 ▲46銀△43銀▲35歩△32金▲34歩△同銀▲38飛△45歩。

▲35歩△同歩▲46銀はうまくいかなかったので、▲46銀で次に▲35歩を狙うのはどうか。

対して△43銀と上がる。▲35歩△32金で通常の雁木になったようだが、▲34歩△同銀▲38飛に△45歩と反撃できる。

最終図以下▲55銀は△43金で、先手の銀が不安定だ。▲34飛△77角成▲同銀△46歩▲同歩は、△33歩と打たれても先手の飛車の行く場所が難しい。後手は歩損の代償に馬が作れそうだ。

▲46銀ー▲35歩の攻め方だと、△45歩と反撃される。

手順 ▲26銀△45歩▲78金△42飛▲37銀△64銀▲33角成△同銀▲77銀△94歩▲96歩△82飛。

▲46銀ー▲35歩の攻め方だと、▲38飛に△45歩の反撃があった。▲26銀と上がるのはどうか。これなら△43銀▲35歩△32金▲34歩△同銀▲38飛に△45歩が銀に当たらない。よって▲38飛に△43銀と引くことになり、▲35銀と進出できる。こうなれば先手十分だ。

▲26銀には△45歩と突く。▲78金に△42飛が意表の四間飛車だ。▲37銀と△46歩を受ける手に、△64銀と上がり次に△55銀の進軍を見せる。

▲33角成と角を捌くが、このとき△同銀と形良く取れるのも△32銀型のメリットだ。

△82飛と飛車を戻し、角換わりの将棋っぽくなる。後手は飛車の動きで2手損しているが、先手は角の動きと銀の動きで3手損しているのでトータルで後手が1手得している。

後手不満ない序盤戦だ。

▲37銀に△73桂の変化

手順 △73桂▲46銀△65桂▲66角△86歩▲同歩△同飛▲78金△45歩▲37銀△35歩。

△73桂の変化を見ていきたい。対して▲35歩△同歩▲46銀は△45歩として、△73銀のときの変化とあまり変わらない。

▲46銀にはどうするか。△73銀のときと同じように△43銀▲35歩△32金とすると、今度は▲34歩△同銀▲38飛△45歩▲34飛で、後手の飛車の横利きがないので△32金が浮いている。

桂馬は足が早いので、いきなり△65桂が成立する。

△65桂に▲55角は△45歩▲82角成△46歩で後手良し。▲66角にも△86歩から動いていく。

最終図は後手が主導権を握っている。▲35同歩なら△36歩▲48銀△66角▲同歩△55角から攻めていける。

△32銀型は▲37銀からの動きに対応しやすい。先手はすぐに仕掛けづらいので、駒組になることが予想される。

ちなみに△73銀と△73桂は、▲78玉から駒組になったとき違いが出る。

手順 ▲58金右△43銀▲37銀△32金。

テーマ図から▲58金右ともう一手待ってみる。あくまでも△32銀型で戦う順もあるが、▲58金右を見て△43銀と上がる手も有力だ。

最終図を見てみると、先手は▲58金右を保留する変化にできなくなっている。一局ながらも後手の主張が通る。

メンバー内マッチの管理人VSたいちた戦の記事は一つの進行例だ。こちらから。

次回は△32銀型に対する先手の対策を見ていきたい。

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