「トマホーク」は三間飛車から派生する攻撃形の1つです。

居飛車側が最短で穴熊を目指したときに発動する場合が多く、角銀桂香で端と玉頭に集中砲火を浴びせることで、穴熊に組んだことを後悔させてやろうという狙いがあります。

1~2筋を戦場にすることを目指すため、振り飛車で多用される美濃囲いなどには囲わず、▲48玉型のまま戦うケースが多いです。

上図▲17桂は初めて見るとぎょっとする手で、奇襲のように映るかもしれませんが、▲36歩~▲37桂という通常の使い方に比べて、①1手攻めが早い②後々▲25桂と跳ねて△55角と逃げられた時に香取りにならない、というメリットがあります。

◆進行例

では、この後の進行例をざっくり解説していきます。

・△15角と歩を取った場合

△15角と歩をタダ取りされたらどうするのか、最初に持つ疑問だと思います。

▲25桂と角取りで跳ねて、▲65歩と自分の角道を通すのが、トマホーク作戦の骨子。3手進んだだけで、先手の駒がのびのびとしてきたのがおわかりかと思います。

桂香を端攻めにスタンバイさせた後、▲66角と飛車に狙いを定めるのが継続手段です。飛車を取れば▲41飛と打ち込む手が厳しいので、以下△84飛▲74歩のような戦いは望むところ。以下は1例ですが、▲96香まで進むと飛車が詰んではっきり優勢です。

・△32金と駒組みを進めた場合

△32金と穏当に進めた場合も、同様に▲25桂~▲65歩と進めます。

▲66角までは、2016年に行われた、第59期三段リーグの山本博志-藤井聡太戦と同様の進行。以下は一例で、▲72角まで進めば先手優勢です。

山本三段がこの将棋を快勝し、この期の三段リーグで1位昇段を決めた藤井三段がプロデビュー後29連勝という社会現象にもなった活躍をしたことで、トマホークの知名度も一気に高まり、より居飛車側に警戒されるようになりました。

・▲25桂と跳ばせない指し方

桂を跳ばれると攻めが厳しいため、△24歩と防ぐ指し方が登場します。

これには、初志貫徹で▲26歩~▲25歩を狙うのがよいでしょう。この歩を取ると▲同桂と取り返されて無効ですし、取らなくても▲24歩△同角▲25桂で同じことです。

防ぐ手立てとして△35歩と飛車のヨコ利きを通して守る手が考えられますが、▲27銀~▲26銀と数を足された最終図は、これ以上の受けが間に合いません。あとは▲35銀~▲24歩~▲25桂と押しつぶしていけば自然と勝ちになります。

◆失敗例・発動できないパターン

これまで見てきた通り、決まれば破壊力抜群のトマホーク戦法ですが、注意点もあります。

例えば、上図のような進行。▲45銀と出る手自体を防がれているパターンや、まだ穴熊が決まっていない状態で▲17桂と跳んでも上手くいきません。

角銀が使えてこないため攻めに威力が乗らず、相手陣もそれほど端攻めに弱い形ではないからです。このように、トマホーク戦法は相手の駒組み次第で発動できない場合もあります。

◆まとめ

トマホークは、守備の手を後回しにして相手陣の最弱点を最速で攻めるため、破壊力が抜群に高く、振り飛車の天敵とも言える居飛車穴熊に対して非常に有力な作戦です。発動すれば本記事の手順そのまま勝勢に持ち込めることも多いので、ぜひ覚えておきたい手順です。

反面、相手の弱点(=囲い)がはっきりしない状態で発動すると、穴熊囲いを中止されるだけで▲17桂が負担になって不利になってしまうので、実際に使用される場面は限られています。裏を返せば、トマホーク戦法があることで居飛車は一直線に穴熊に組みづらくなっていると言えるのです。

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