目次
第1図
後手が▲95歩を取らせた場合、先手は①▲88玉+▲47銀 ②▲68玉+▲56銀+▲38金と今回検討する、③▲79玉+▲56銀+▲48金がある。
▲79玉や▲88玉と囲うのは、9筋の位に近づいて位を生かそうとする思想だ。後手から△95歩の端攻めがないのも大きい。
一方で玉が8筋7筋に近づくので、後手の攻めを受け止める必要がある。
第1図から①△65銀 ②△75歩▲同歩△65桂の攻めがある。
今回は①の△65銀を見ていきたい。
△65銀に▲同銀は△同桂▲66銀△47銀で後手良し。
△65銀に▲47銀と引くのも元気がない。△54角や△43角で攻めが続く。
▲63銀は打てたが、最終図△28銀まで進むと後手指せる。飛車の逃げる場所が難しい。
△65銀には▲55銀が良さそうだ。
▲55銀にも△43角から攻め続ける。
対して▲35歩も有力だ。△65銀の仕掛けが指され始めた当初、▲35歩が先手の対策だった。そこから結論が出たか出ないか分からないまま、▲68玉が主流になってしまった。
▲35歩もかなり難解だが、今回は▲68玉の変化を見てみたい。
▲66歩では先に▲68玉としても合流する。
最終図から後手の指し方が複数考えられる。
まずは△75歩とつく将棋から。将来先手から▲77金と角が追われることが予想されるので、事前に紐をつけている意味がある。
もし△75歩にも▲77金ならば△86歩▲同歩△65歩のような攻めが可能になっている。
△75歩には▲45歩と攻め合う。次に▲44歩と取り込めれば大きい。
対して△54歩もいい手だ。▲44銀なら△47歩が痛い。▲58金とかわしても△38銀がある。
先手はやむなく▲64銀とかわす。
6筋の歩を取ると今度は△86歩▲同歩△67歩と叩かれる。
△67歩に▲58玉とかわしたいが、△86飛▲77銀に△49銀で後手の攻めが決まる。
飛車以外で取ると△89飛成があるし、▲同飛だと△68歩成▲同玉△49角成がある。
よって△67歩に▲77玉とかわすことになりそうだ。
▲77玉には△68銀▲88玉△59銀不成が継続手。▲同飛は△68歩成▲同金△86飛▲79玉△88歩で後手優勢だ。
先手は▲48金を犠牲に▲75銀ー▲77金と角を取る。
△38銀不成で飛車の逃げ場所がない。▲69飛も△68金で取られる。
▲28飛は△27金で飛車を犠牲に反撃しようとする手だ。▲26飛△27金も同じようでも、将来△25金と取られるので損する。
▲74歩に飛車を取るのを我慢して△22玉も細かい一手。
△28金を急ぐと▲73歩成△同金▲74歩△72金▲64角△22玉▲73歩成で先手指せる。すぐ▲64角と打たないで▲73歩成△同金▲74歩を決めるのも細かく、金を72にすることで▲72とが飛車に当たるようにしている。
▲65角ー▲54角に後手はどうするか。
△72金を受けつつ銀取りにする△63桂は一見良さそうだが、▲64銀とかわされて負担になる。
▲65角打が詰めろで入るのも大きい。
最終図▲73歩成とした図は先手良し。
△72金を見捨て、△51飛から攻め合う順はどうか。
△57飛成に▲73歩成は△68歩成に▲77歩を用意した手。先に▲87玉△79飛▲73歩成でも合流する。
△84歩は上部脱出を牽制した手。▲84同銀と取ると△92桂が好手で、今度は△84歩に紐がついてしまう。
第2図 重要なテーマ図
最終図の先手の方針が難しい。入玉を目指すだけなら割と楽だが、お互い24点に届きそうで、持将棋指し直しになると今度は手番が入れ替わる。指し直しは先手不本意だ。
後手玉を寄せに行こうとすると、駒を渡すので先手玉が危険になる。
寄せと入玉を天秤にかける指し方が求められる。これは後手にも言えることだ。
寄せを狙いつつ入玉を目指す、入玉を目指しつつ寄せを狙う。こんな条件になるのは珍しい。
第3図
▲77金から一目散に入玉を目指すのも考えられる。
△68歩成からボロボロ駒を取られるが、▲64玉まで行けば安心感はある。
▲64玉に代えて▲41銀△42金▲32金と寄せにいきたいが、これを△32同金なら▲同銀成△同玉▲54馬△22玉(△43桂合は▲同馬△同玉▲54角以下詰み)▲31角△12玉▲32馬で受けなしになるが、▲32金に△12玉と逃げられて、一気の寄せがないと先手玉が危険になる。
▲64玉以下△78竜左▲65金に△51桂や△53桂のような攻めを正確に受ける必要があり、先手もしんどさはあるだろう。
第4図
▲77歩から入玉を目指す手もある。
▲44歩△同銀を入れて▲77歩としても似た感じになる。
△89飛成から△99竜で桂馬を掃き出させて、△19竜としたのは入玉を目指した順。
△99竜に代えて△92桂と寄せに向かいたいが、▲44歩△同銀▲82角と催促されて焦る展開になる。寄せが失敗すると、後手の入玉が難しくなるし入玉できても点数勝負で負ける。寄せにリスクはつきものだ。
途中の▲44歩は一点確保した意味もある。
最終図▲74玉まで進めば、さっきの▲64玉の図より先手は手厚い。しかし後手玉も△13玉から入りやすくなっている。
これは相入玉の可能性が高い。
▲77金か▲77歩、どちらの方針で指すか難しそうだ。
持将棋、点数勝負を研究する時代になったが、結論はなかなか出ない。