第1図
第1図の▲45桂の速攻の成否について検討したい。
まずは▲45桂に至る手順を見てみたい。
第2図
先手が▲45桂の速攻をしたいとき、先手は1筋の交換を入れる必要がある。▲15歩からの端攻めができないと攻めがなくなる。
▲38銀を上がる前に▲16歩とつくのがポイントだ。
その理由は後手が▲16歩を受けなかったときに現れる。
▲16歩に△14歩と受けなかった場合
1筋の位を放棄し、今度は後手が△65桂の速攻を狙う。
このとき▲48銀と57の地点をカバーできるのが大きい。これなら△65桂の攻めに対応しやすくなっている。
△65桂の攻めができなければ、持久戦になって▲15歩の位が生きる。
そのため▲38銀と上がる前に▲16歩と打診する。
▲37桂に対して△42玉▲46歩△64歩と、自然に駒組すると▲35歩から仕掛けることができる。
この順も難しいが、後手は受け身になるので後手が避ける傾向にある。
先手に▲45桂と仕掛けさせないように、後手にさまざまな工夫が出てきた。
▲45桂を避ける後手の対策をあげるときりがないが、大きく分けて4つある。
(1)△14歩と受けない。
(2)△33銀と上がらない。
(3)腰掛け銀を諦めて、△73銀から早繰り銀を目指す。
(4)△52金と5筋をしっかり守る。ただし、△81飛ー△62金の格好を目指すと一手損になる。
(2)はともかく、(1)と(3)と(4)は妥協だ。駒組の段階で妥協したくない。
そうした中、現れたのが△74歩ー△73桂だ。
△73桂の狙いは明快、△65桂だ。
▲78金とするとすかさず△65桂馬が成立する。
最終図△76飛とした局面は後手ペースだ。
△65桂を防いで、▲66歩もある。△65桂を消されたので△52金から駒組に入る。
早めに△73桂と跳ねたメリットは▲66歩をつかせたことだ。6筋が争点になる。
最終図△84角で△65歩を狙った図は、後手の作戦が生きている。
△84角以下、▲75歩から仕掛けるとどうなるか。
△同角▲45桂△22銀▲71角△81飛▲53桂成△同金▲62角成△84角で、馬はできたがこのあとの攻めが難しい。
▲72馬から飛車角をいじめようとしても、千日手になる。
▲48金は△84角から△65歩を狙われた。
先に▲79玉とすると、△84角には▲68飛で受かる。しかし△31玉とされたとき、また先手の手が難しい。
▲48金と上がると、△65歩▲同歩△75歩と仕掛けやすい。
▲48金に代えて▲58金だと△65歩の仕掛けには対応しているが、△63金と上がって別の将棋になる。
先手は▲48金ー▲29飛の形を目指したいが、早めの△73桂で▲66歩をつかせることで先手の駒組に制約がかかっている。
では、△52金に▲35歩と仕掛けるのはどうか。
第3図
▲35歩△同歩▲45桂に△22銀と引くと、▲24歩△同歩▲75歩で攻めが続く。これは△73桂が咎められてしまった。
最終図以下、△23銀なら▲同飛成△同金▲74歩の要領だ。
△22銀は後手がまずかった。△34銀が勝る。
△34銀に▲56角だと、△55角が絶好の位置になる。▲47銀と受けたら△36歩、▲26飛と受けても△86歩▲同歩△88歩で後手良しだ。
▲24歩にも△64角のラインが急所になる。△55角も同じようだが、▲47銀△44歩▲23歩成△同銀▲33歩△22金▲56歩△64角▲65歩の変化を与えるので、△64角が良さそうだ。
最終図以下▲23歩成△同銀▲33歩△同桂▲同桂成△同金▲22角△32金▲11角成△46角が一例の進行で、後手が指せる。
第4図
△73桂▲66歩△52金に▲35歩はうまくいかなかった。
そこで△73桂にすぐ▲45桂が考えられる。
本当は▲35歩△同歩▲45桂としたいのだが、▲35歩に△65桂で後手指せる。▲34歩には△22銀と引いて、▲66銀に△86歩の攻めが間に合う。
▲45桂に△22銀と逃げる変化はどうか。
△22銀に▲75歩で攻めが続く。△75同歩に▲24歩で、74に打つ歩を入手しにいく。
後手は桂頭をカバーできない。
最終図▲47角成が手厚い一手で、先手良しだ。
▲75歩に△86歩は、▲同歩なら△64角として▲74歩△65桂を用意した手だ。
対して▲53桂成が好手になる。
最終図以下△64銀は▲56桂、△62銀は▲54桂で攻めが続く。王手飛車のラインが付きまとう。
△22銀と引くのは危険そうだ。
後手は△44銀とかわす。
▲24歩△同歩▲同飛に△23歩は自然のようでも疑問で、▲34飛で先手良しになる。
△33桂に▲21角が厳しい。△42玉と受けると▲32角成以下いきなり詰む。
まだしも▲21角に△42金だが、▲24歩△同歩▲同飛で先手良しだ。
△33桂と跳ねずに△41玉と受けても、▲22歩△同金▲31角で先手良し。
▲31角に△32金と寄ると▲同飛成△同玉▲42金で詰む。
第5図
よって後手は△23歩ではなく、△22歩と受けることになる。これなら▲34飛に△42玉と受けることができる。▲22歩がない。
△42玉に▲24飛と戻すのも△86歩▲同歩△55角のラインが急所で、後手指せる。
第5図の評価が▲45桂の成否のカギになる。
本当は▲75歩から攻めたいのだが、△86歩で▲同歩は△65桂、▲同銀は△55角で対応できる。
△22銀と引いた変化と違って、△44銀は53の地点を守っている。
▲75歩の攻めができないとなると、先手の指し手が難しい。
第5図で▲78金と△65桂を備えても△55角▲47銀△45銀▲同歩△19角成で二枚替えになる。▲78金に代えて▲66歩と△65桂を消しても△64角▲47銀△86歩▲同歩△同角で8筋を破られる。
▲37銀は△64角、△55角のラインをケアして△65桂を待ち構える手だ。
△65桂と跳ねれば、▲66銀△86歩▲34飛△42玉▲65銀△87歩成まで一本道。
この局面はかなり難解で、△78とが来る前に後手玉を寄せきれるかというテーマだ。
▲83歩△同飛▲74銀や▲32飛成△同玉▲24桂の筋が怖いが、瞬間耐えることができれば後手に楽しみが多い。
第5図で▲78金や▲66歩と△65桂に備えると△64角があり、▲37銀と△64角をケアすると△65桂がある。
第5図を先手が誘導するならば、具体的な方針が求められる局面だ。