横歩取りは後手が誘導する戦法である。序盤から激しい戦いになりやすく、事前の研究や経験が活きやすいため先手を持って指したくないという方も多いだろう。では、横歩取りを回避するにはどのように指すのが良いだろうか。
初手から▲76歩△34歩▲26歩△84歩と4手進んだ局面で、先手の考え方は、
【A】今すぐに変化する
【B】横歩取り模様に進めて、▲34飛以外の手を選択する
の2通りがある。
さらに4手目△84歩の局面から
【A】今すぐに変化する
A-①▲66歩からの雁木
A-②▲22角成の先手番一手損角換わり
【B】
B-①▲26飛からの相掛かり
B-②▲28飛からの横歩とらせ
B-③▲96歩からの横歩とらせ
B-④▲58玉戦法
のように細分化することができる。
A-①▲66歩からの雁木
平凡に進めると
このように相雁木となり、▲45歩の仕掛けや▲88玉が有力とされている。
また、後手は角道を止めずに右四間飛車などで速攻を狙う指し方もある。
雁木は、受けを苦にしなければ有力な選択肢となるだろう。
A-②▲22角成の先手番一手損角換わり
序盤で▲22角成とすることで後手番になる代わりに、強制的に角換わり戦に持ち込むことができるが、後手に千日手に持ち込まれやすく、得策とは言えない。具体的には下図のように▲26歩型で組んだ場合、△22玉なら▲25桂で打開できるが、代えて△41飛や△42銀などのように手待ちをされると上手く打開することができない。
B-①▲26飛からの相掛かり
B群はどれも横歩取りに近い空中戦になりやすいが中でも▲26飛は比較的穏やかな指し方である。以下、後手は△82飛(△23歩)か△85飛を選択することになり、前者は先手が、後者は後手が主導権を握る展開となる。先手で相掛かりを志向する方には合っている作戦だと思う。
B-②▲28飛からの横歩とらせ
これも相掛かり志向だが、今度は△76飛と横歩を取る手がある。以下、自然に進むと下図のようになる。
先手は中原囲いに組むのが有力で、この後は機を見て▲24歩の合わせを狙っていく。
横歩取り△85飛戦法によく似ており、先後の差を活かせれば面白い。
B-③▲96歩からの横歩とらせ
▲96歩は様子見の一手で、△76飛とすると先後が入れ替わったような局面になる。
以下、相横歩取りに進めれば、▲84飛と回ったときに△95角の王手飛車がない。しかし、後手も横歩を取る一手ではなく、△14歩や△94歩から手待ち合戦が始まることもあり、定跡にとらわれない力戦志向の指し方である。
ここまで様々な指し方を見てきたが、お好みの作戦はあっただろうか。個人的には、どれも確実に主導権を取れる指し方ではないため、やや不満である。横歩取りを拒否するのであれば、相応のリターンがある指し方を選びたいところである。
次回からは、B-④▲58玉戦法を研究する。今までの作戦よりも積極的で、主導権を握れる指し方だと思っている。