前回の続き

第3図

先手にとって緊張感のある局面。先手は後手の早い動きを警戒する必要がある。

△34飛と浮かれた局面で、▲56飛は△37歩成▲同銀△54歩の仕掛けがある。

△45角に▲26飛も△24飛で△27角成と△67角成が受からない。最終図、△54同角の局面は先手陣がバラバラでまとめるのが大変。しかし、後手も駒を上手に使う必要があるので、こうした展開が苦手な人もいると思う。ただ先手としては警戒すべき順だ。

△34飛に▲99玉も不注意の一手。△74飛がある。

▲36歩ー▲37銀で何もないと思いきや、△77飛成が鋭い手。△74歩~△75歩を見せられて先手はまとめるのが難しい。この戦型では後手が△76飛と取る順は頻出し、先手としてはその格好は避けたい。

△74飛に▲56飛と受けるのも△54歩がある。以下▲68銀と受けた図は、先手は穴熊とは思えない状態だ。最終図以下△56歩▲58歩△37歩成▲同銀△45角▲38金△64飛のように強く戦うか、△37歩成▲同銀△33桂のように軽く指すか。先手の玉が薄く神経を使う将棋だが、後手としても細い攻めをつなげる神経の使う将棋だ。

先手は67の地点をカバーする▲78金が手堅い手になる。▲78金を保留して▲98香としたが結局▲78金と上がることになりそうだ。▲78金には△94歩とついておきたい。

△94歩ですぐ△33銀もあって、▲36歩△同飛▲37銀△76飛▲46銀に△74飛から飛車をスムーズに戻すことができる。しかし△33銀▲99玉△44銀に▲36歩とされると、△同飛▲37銀△76飛▲46銀△74飛となったとき飛車を2筋、3筋に戻せないのが欠点になる。△74飛の後で△33銀と引く前例もあるくらいだ。

▲37銀に後手は△34飛と引くことになり、▲46銀と銀を合わせれば難しい形勢。先手は△44銀を見て▲36歩としたいので後手は△44銀を急ぐ理由はあまりない。そのため△94歩はいいタイミングだ。

△95歩と端が取れたのは大きい。最終図の△33銀以下、▲36歩△同飛▲37銀に△76飛と△34飛のどちらも有力で、後手十分の序盤戦だ。

△33銀に代えて△52金左とすると▲56飛で▲26飛の筋がちらつく。

▲46銀と上がった図は△44銀に▲45銀がある。△52金左と上がると先手は▲56飛を考えたい。

つまり△33銀に▲56飛とすると

味良く△32金と受けられて先手不満だ。

△94歩に▲96歩と受ける手も自然だが、△76飛と取った展開になったときに9筋の交換は後手が得をしている。

最終手、△13角では△44銀も有力。先手は結局▲36歩と取らないと右辺の形をほぐすことができない。この展開も後手不満ない。

第4図

第2図で、①△33銀 ②△36歩でも後手は十分に戦えた。③△34飛は持久戦を視野に入れた手。

△34飛に▲99玉とするのは不注意で、すかさず△74飛とされて一本取られる。▲56飛△54歩以下△45角が激痛だ。

△74飛にはまだしも▲88銀△76飛▲68角だが、△33銀▲35角△44銀とされて先手自信なし。▲99玉の前に▲78金と備える必要がある。

まずは後手が普通に駒組をし、△33銀から銀を繰り出していくのはどうか。先ほどと違って3筋の歩が切れていないのでこれ以上前に進めない。これは相性が悪い。3筋の歩を切らない場合は銀を繰り出す将棋になりにくい。これは後手が苦労する。

手順中▲48銀では▲38銀もある。その場合は△24飛の牽制が考えられ、銀が不自由になる。▲48銀だと△24飛▲38金で、銀の活用がスムーズだが金が玉が離れる。一長一短だ。

△33銀ー△44銀としても効果が薄かったので、△51銀と守る手を検討したい。△52金左▲99玉△51銀でも同じようだが、▲56飛と浮く手が気になる。△62銀▲26飛△24歩で受かるが形が乱れる。△52金左を保留していれば△32金と形良く受けることができる。

一直線に囲い合って、△33桂まで組めれば後手不満なし。

以下▲68角には△54歩▲同歩△同銀から動けるし、▲46歩には△54歩▲同歩△77角成▲同金△54飛から動ける。先手玉は穴熊だが、右銀が負担なので後手は強い戦いができる。

▲59金と寄るところでは▲38銀ー▲46歩を急ぐ順も有力。▲38銀で▲48銀だと△24飛▲38金で△49角のキズがあるので△54歩から動かれる。仮に▲48銀ー▲57銀ー▲46銀と活用させても△14歩ー△33桂ー△13角と構えておけば問題ない。後から△44歩ー△45歩と追うことができる。

▲48銀には常に△24飛▲38金△54歩から動く順はあるので覚えておいて損はないだろう。

△24飛は▲47銀を上がらせない手。

▲68角に代えて▲69金は△54歩▲同歩△77角成▲同金△54飛で動ける。▲68角はこの仕掛けを避けた手。

最終手△14歩のタイミングはとても難しい。すぐ△54歩▲同歩△同銀とする順もあるが、▲77角△同角成▲同金△28角▲22角の攻め合いは先手だけ桂馬が取れそうだ。この△14歩はこの▲22角のときに△13香とできるようにした意味もある。

△14歩に▲45歩なら△34飛▲56飛△13角と上がる構想だ。通常は居飛車穴熊対振り飛車美濃の場合は、居飛車穴熊の方が固いが、左穴熊の作戦の場合、特に△51銀から4枚美濃に組めるときは振り飛車の方が固い。振り飛車は強く戦うことができる。

ちなみに△34飛▲78金に△36歩としても、△36歩▲38銀△34飛とした変化と合流する。△34飛と△36歩のどちらを先に指しても同じなのは都合良い。▲98香に代えて先に▲78金△34飛▲98香としても△36歩で、結局合流してしまうからだ。

まとめ

第2図の①△33銀 ②△36歩 ③△34飛のどれも有力だ。左穴熊の作戦は先手に苦労が多い。後手としては気楽に指せると思う。

よって第2図の▲98香は危ないようだ。先に▲78金として、展開によって▲98香と上がるかを決めた方が勝る。先に▲78金で△34飛に▲98香だと合流するが、先手は△33銀の変化が消えたことに満足してこれまで検討した持久戦の変化にするか、▲38銀ー▲46歩と駒組をして穴熊を諦めることを視野に入れるか。穴熊を諦めることが視野に入ると▲78金にも疑問が残る。▲78銀の一手で囲いが完成するからだ。

こうした葛藤がある中で先手がどう駒組するか、センスの問われるところだ。

左穴熊を指すときのざっとしたポイント

(1)△54歩の仕掛けを見せられたら▲78金で備える。もっと言うと▲98香は形の決めすぎかも。

(2)△44銀を見たら▲36歩と取りたい。

(3)△52金左を見たら▲56飛とする。後手は△52金左を保留した方が含みがある場合がある。

(4)後手が9筋や1筋の歩を突くのは常に得。

(5)▲48銀と▲38銀のどちらの指し方も一長一短。具体的には△24飛のときに違いが出る。

(6)先手は穴熊なのに薄い。後手は強く戦える。先手は受けの力が求められる将棋。

このあたりを頭に入れておけば、研究から外れてもある程度方針が定まるだろう。

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