すぐ役立つような戦術を紹介していきたい。

今回は一手損角換わりの将棋だ。一手損角換わりは平成に流行し、今なお指されている戦法だ。

△85歩に▲77銀と上がらない

手順 ▲36歩△62銀▲37銀△64歩▲46銀△63銀▲35歩△同歩▲同銀。

△85歩と突いた局面。通常は▲77銀と上がって8筋の歩交換を防ぐのだが、先手の手得を生かすべく、▲77銀と受けずに▲36歩から早繰り銀するのが工夫の駒組だ。

▲36歩に△86歩▲同歩△同飛は、▲77桂として、以下△82飛▲37桂△42玉▲46歩と進むと、次に▲35歩△同歩▲45桂と攻めていける。どこかで▲65桂と使えるのも大きい。

▲36歩に△62銀から腰掛け銀を目指しても、先手は銀を繰り出し、▲35歩から仕掛けていける。もし最終図で▲77銀△54銀が入っていると、▲35歩△同歩▲同銀に△86歩▲同歩△85歩と十字飛車を狙う反撃ができる。

▲16歩△14歩の交換が入った場合は▲68玉を省略できる

手順 ▲16歩△14歩▲48銀△33銀▲36歩△85歩▲37銀△62銀▲46銀△86歩▲同歩△同飛▲77桂△82飛▲35歩。

▲16歩と打診する手がある。

これは、▲15歩の位が取れたら▲46歩から腰掛け銀、△14歩と受けてきたら▲36歩から早繰り銀をする意図だ。▲16歩△14歩が入った場合、▲46銀ー▲35歩△同歩▲同銀ー▲24歩△同歩▲同銀△同銀▲同飛のとき△15角の王手飛車がないので、▲68玉を省略して攻めることができる。

△14歩以下、▲48銀△33銀▲36歩△85歩▲37銀に△86歩▲同歩△同飛は▲75角がある。

△62銀▲46銀を入れてから△86歩▲同歩△同飛とすれば▲75角はないが、▲77桂△82飛▲35歩として先手指せる。

△62銀が壁になっているのも気になる。

△85歩に▲77銀と上がった場合

手順 ▲77銀△62銀▲36歩△64歩▲37銀△63銀▲46銀△54銀▲79玉△44歩▲35歩△43銀▲34歩△同銀右▲55銀。

△85歩に▲77銀と上がらない指し方が最近注目されているが、▲77銀と受ける将棋もある。

以下△62銀▲36歩△64歩▲37銀△63銀▲46銀△54銀となって、▲35歩△同歩▲同銀は△86歩▲同歩△85歩がある。

▲79玉と引いてから▲35歩と突けば、▲89桂に紐がつくので△86歩▲同歩△85歩に▲同歩と取れるようになる。

しかし後手も一手の猶予を得るので、▲79玉に△44歩▲35歩△43銀の受けが間に合う。

最終図以下△52金▲64銀△42玉が予想され、これからの将棋だ。

これと似た将棋にこちらの記事の将棋がある。部分的な手筋は応用できる。

なぜ一手損角換わりに早繰り銀を選ぶのか

図は一手損角換わりの流行初期の将棋だ。

△85歩と突いてある同型の場合は、▲45歩△同歩▲24歩△同歩▲15歩△同歩▲75歩△同歩▲35歩と仕掛けて先手指せるという定跡だ。

しかし△84歩型だと同じように▲45歩△同歩▲24歩△同歩▲15歩△同歩▲75歩△同歩▲35歩と仕掛けると、△44銀▲24飛△23歩▲29飛△85桂で後手良しだ。

△85桂と跳ねる展開になるので、一手損の△84歩型が生きる。

次に▲48金ー△62金型の場合を見ていきたい。

△85歩と突いてある同型の場合は、▲45歩△同歩▲同銀と攻めていける。

詳しくはこちらの記事で検討した。

△84歩型だと、例えば▲45歩△同歩▲同銀△52玉としたとき、▲75歩△同歩▲74歩は△85桂と逃げることができる。これも△84歩型が生きている。

このように相腰掛け銀になると、先手の一手得が生かしづらい。むしろ△85桂と跳ねる展開になりやすいので、一手損が生きている。

そのため先手は早繰り銀を選ぶことが多い。

△85歩を見て腰掛け銀にすれば、通常の角換わりに戻る

手順 ▲77銀△33銀▲46歩△62銀▲47銀△64歩▲36歩△63銀。

後手が△84歩型で待機している場合は、△84歩型を生かされる可能性があるので先手は腰掛け銀に組みづらいが、△85歩と突いたのを見て腰掛け銀にすれば、通常の角換わりに戻る。

後手は一手損だが、駒組が飽和したら△72金ー△62金や△52玉ー△42玉のように手待ちをするのであまり気にならない。

もちろんこれは一局だが、先手としてはせっかくの一手得を生かしづらい展開だ。

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