第1図

飛車先を伸ばし合って、▲38銀△72銀からお互い手が広い将棋になる。

△72銀に、▲16歩△14歩▲68玉とするのが飯島栄治八段が得意とする指し方だ。

1筋の交換は、先手から端攻めができる利点がある。一方で、▲24歩△同歩▲同飛のとき▲23歩に△13角とできるので、△23歩と打つ一手ではなくなっている

△23歩を打つ必要がない、というのは意外に大きくて後手に得な変化が出てくる。


飯島八段が書いたこの本には、▲68玉のあらゆる変化が書かれている。

将棋情報局のYouTubeでは、飯島八段の解説つきで▲68玉の将棋を見ることができる。

こちらもおすすめだ。

第1図からの指し手を見ていきたい。

▲68玉に△52玉は攻撃を見据えた囲いだ。

△52玉の他にも△42玉、△94歩、△74歩、△86歩なども考えられる。

▲76歩は、次に▲77角と上がれれば8筋の歩交換を防ぐことができる。よって後手は▲76歩のタイミングで△86歩とつく。

▲同歩△同飛▲36歩の局面が、①△94歩 ②△74歩 ③△76飛の分岐になる。

△76飛と横歩を取りたいが、取ると▲82歩の筋がある。

①△94歩と②△74歩はどちらも▲82歩のとき桂馬を逃げられるようにした意味だ。

△74歩ー△73桂の方が中央に活用できるが、▲24歩△同歩▲同飛のとき△74歩を取られるリスクがある。

△76飛と取られたとき、先手は本当に▲82歩で良いだろうか。

▲82歩には△86飛▲81歩成△同飛として、次に△86歩を狙う。

▲24歩△同歩▲同飛に△86歩とできるのも、△14歩が生きているからだ。

▲84歩△23歩▲25飛△84飛に▲66角から▲88銀で8筋は受かるが、△34歩として次に角交換して△87角を狙う。

先手は桂得だが歩切れ、という構図だ。バランスが取れている。

脱線して、8手目△72銀に▲96歩△94歩▲68玉とした局面と比較してみたい。

変化

9筋の交換が入ると先手は▲36歩とつきやすくなる。これは△14歩と同じ理屈で、すぐ▲87歩と打つ必要がないからだ。

▲96歩の効果で、先手は▲76歩を省略して▲36歩ー▲37桂を急ぐことができる。

右桂の活用を急ぐことで、△76飛と取りづらくしている。

▲82歩に△93桂と逃げる余地はあるが、▲81歩成△同銀▲24歩△同歩▲同飛と進んで、▲95歩から桂馬を攻める楽しみがあるので先手指せる。

▲82歩に△86飛と戻すのも、第2図で△76飛とする変化と比べて、▲37桂と△94歩の交換が入っている。これは明らかに先手の得だ。

▲37桂に△52玉▲76歩の進行を避けて、▲37桂に△74歩や△82飛など後手の工夫が見られるが、△76飛と取らせないという目的は果たしている。

▲82歩と打つのはこの変化と比べて先手が損なので、第2図△76飛に▲24歩とする手も考えられる。

△24同歩▲同飛に△23歩は▲84飛△83歩▲87飛△71金▲37銀と進んで、△71金の格好がひどい。

▲24同飛に△86飛と戻る手には▲23歩△13角▲28飛と引いて、次に▲15歩を見せれば先手まずまず。

△86飛に代えて△74歩が勝りそうだ。▲23歩△13角▲28飛と同じようにやると△73桂で後手指せる。よって▲23歩△13角▲25飛になりそうで、後手の角をめぐる勝負になる。

△76飛は▲82歩が見えているが、先手も▲37桂の一手が入っていないので意外と大変。△76飛に▲24歩の変化も先手を良くするのは大変だ。

△76飛としても一局の将棋になりそうだ。

△76飛もあるが、一気に激しくなる。△74歩は桂馬の活用を見せつつ、△76飛と取る含みを残した手だ。

第3図

△74歩を見たら、セオリー通り▲24歩△同歩▲同飛と△74歩を狙う。

△23歩と打って敢えて△74歩を取らせ、その代償として手得を主張する手もある。

△73桂ー△72金と駒組し、△86歩▲同歩△同飛でちょっかいをかけるイメージだ。

△84飛と△74歩を受けると、▲23歩と打たれる。

△13角に▲28飛と引くと△75歩で、▲同歩は△86歩、▲87歩は△76歩で、飛車の横ききがあって1筋を攻めることができない。

▲25飛にも△75歩が勝るが、△24歩なら▲45飛△23金▲15歩と攻めて先手指せる。

△84飛に代えて△73銀や△76飛でも、▲23歩から△13角で▲28飛や▲25飛の筋が狙える。

△74歩を受けない、▲23歩も受けない、それが△73桂だ。

同じように▲23歩△13角▲25飛とすると、△88飛成▲同銀△34歩が好手。

最終図△27歩とした図は後手良しだ。

▲23歩は打てなかったので▲74飛と取ってみる。

対しては△85飛▲87歩△25飛とするのも有力。

もう一つは▲74飛に△34歩とする手で、▲同飛は△77歩が痛い。

最終図△35歩とした図も後手が主導権を握れそうだ。

▲74飛と取りづらかったので、▲37桂と態度を保留する手はどうか。

これにはすかさず△76飛と取られて先手が作戦負けになる。

最終図△35角まで進むと後手良しだ。

▲14歩には△18歩▲同香△17歩を用意している。

▲24同飛に△73桂は有力で、対して▲23歩、▲74飛、▲37桂のどれも先手がぱっとしない。

△74歩ー△73桂は十分に考えられる指し方だ。

今回は△74歩とつかれた局面を検討した。

先手が1筋の交換を入れたのは端攻めをしたいからだが、端攻めをしても思うように成果が上がらなかった。

相掛かりにおいて、先手の▲96歩、後手の△14歩の価値は大きい。

▲16歩△14歩▲68玉の作戦は、先手が端を生かせるかというテーマだった。まだまだ眠っている変化も多いだろう。

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