左穴熊とは、先手が中飛車に囲い、通常なら▲48玉といくところを▲68玉から穴熊を目指す作戦だ。▲48玉からお互い囲い合うと、後手の飛車の方が玉を睨んでいる、先手は飛車が邪魔になって▲58金左と上がれないが、後手は△52金左とできる、など後手の振り飛車の方が利点が多い。

そこで登場したのが左穴熊だ。左に囲うことで後手の飛車から遠ざかっている。

第1図

まずは第1図。細かい話だが、△35歩とすると▲22角成△同銀▲65角から力戦になる可能性がある。以下△54角▲83角成△27角成▲65馬か、△25角▲55歩△72銀の進行か。後手は手得していて、後手不満ない変化だが、力戦模様を嫌うならば△35歩に代えて△42銀が手堅い駒組だ。

△42銀のデメリットとしては▲75歩として次に▲74歩を狙う手だが、△72金と備えておくか、△24歩▲74歩△82銀と対応するどちらも問題ない。△82銀以下▲73歩成△同銀▲74歩には△82銀と引いておいて▲22角成△同飛▲55角に△33銀で受かる。

この局面でも細かいが、△35歩に代えて△62玉とすると▲56飛として▲26飛を狙われる。△24歩などで受かるが、形が乱れるキライがある。先に△35歩として▲56飛に△34飛を用意しておけば自然に受けることができる。

第2図

後手は美濃囲いに囲い、先手は穴熊を目指した。▲98香では▲78金や▲78銀も有力。▲98香は形を決める手なので、後手の手次第で穴熊に組めない展開になる可能性がある。

一方で、▲78金型の穴熊は▲58飛がいるので、△69銀のキズがつきまとう。このタイミングの▲98香は▲79金型の穴熊に組みたい意思を感じるところだ。

▲98香では▲56飛として3筋の歩交換を防ぐ手もあるが、△34飛との交換は先手損をする。後手は以下△33銀~△44銀と繰り出して、機を見て△45銀から動ける。そうした展開は先手の飛車が目標になる。安全に穴熊に組めれば先手の思惑通りで、後手としては動ける形を目指したいところ。

第2図から①△33銀 ②△36歩 ③△34飛 に分岐する。

まずは①△33銀から。

△33銀に▲56飛は△44銀に▲26飛を用意した手だが、△33飛と受けておいて問題ない。後手は△32金ー△34飛で立て直せる。

▲56銀で▲46銀も△33桂から△24歩を狙えるし、▲56銀にも△33桂で次に△36歩▲同歩△24歩を狙うことができる。これは後手に不満がない変化だ。

▲38銀△44銀▲46歩と歩で対抗できるのがメリット。3筋の歩交換に対して、▲47銀の形良く上がることができる。△34飛に対して▲99玉もあるが、△35銀▲38飛△36歩と押さえ込まれるのが気になる。

▲54歩△同歩▲同飛の局面で後手の方針が決まる。一つは△33桂と跳ねて△31角と角を使う方針。もう一つは△36歩と垂らして▲48金なら△33角、▲38金なら△33桂と使い分ける順だ。

こうした展開では▲98香が中途半端なのが気になるので、第2図での▲98香も悩ませる。

次に②△36歩

△36歩に▲同歩は△同飛から△76飛と取られて後手ペース。▲38銀と受けることになる。ここは▲48銀でもあまり違いが出ない。

△34飛では△37歩成▲同銀△34飛でも同じになる可能性が高いが、△34飛に▲36歩は△同飛で後手ペースなので単に△34飛とした方が含みが多い。

△34飛に代えて△37歩成▲同銀△33銀とするとさっきの変化と違って、▲46歩ー▲47銀型には組まれないが、▲56飛の牽制が気になる。△44銀だと▲26飛△33飛▲34歩がある。この場合後手は△24銀から△35銀と圧力をかける将棋になるが、やや苦労した駒組になっている印象だ。

△36歩▲38銀に△33銀とする変化もあるが、▲36歩△44銀に▲46歩で単に△33銀とする変化に合流する上に、△44銀▲37銀△45銀▲38金とする順も有力だ。

▲38金に対して△52金左とすると▲35歩でしびれる。△同飛▲46歩△36銀▲26銀△34飛▲37歩で銀が捕まっている。▲38金には勢い△36銀だが、▲33歩△同飛▲54歩と反撃できる。

△36歩▲38銀△33銀とする順は単に△33銀だと▲56飛を嫌がった手だが、前述通り△44銀▲26飛△33飛で大丈夫だ。先手に多くの有力な変化を与えて微妙だ。

第3図

△34飛と浮かれた図は早くも緊張感がある。

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