先手中飛車は攻撃力も高く、優秀な作戦だ。対して後手はいくつか対策がある。
その中でも△54歩とついて▲55歩の位を拒否する指し方を見ていきたい。一方で▲55歩と歩交換しやすくなっている。
第1図
△54歩型にするには、まず第1図で後手がどうするかが一つの分岐になる。
すぐ△54歩は▲55歩から歩交換を許す。88の角がスムーズに歩交換でき、さらに手順に▲77角と引くことができた。
この順は手損なく歩交換ができる。先手不満ないだろう。
△54歩とつく前に△85歩とついて、一回▲77角と上がらせれば▲55同角に△86歩があるので▲55歩とはやりづらい。
最終図で▲55歩△同歩▲同飛はあるが、仮に△62銀▲58飛となった図は△85歩と入れずに単に△54歩とした図と比べて後手が一手得している。
このとき▲59飛まで引ければ歩交換した甲斐がある。
▲55歩とつく前に▲48玉として△62銀に▲55歩△同歩▲同飛とする手もある。これなら次に▲59飛と引くことができる。
第2図
しかし、△34歩とつかれ▲59飛には△77角成▲同桂△45角がある。これで角成りが受からない。
▲59飛で▲57飛とすれば△45角はないが、△77角成▲同桂△84角が好手。
▲75角は△同角▲同歩△86歩、▲66角は△同角▲同歩△45角で後手指せる。
第2図は一見先手がまずそうだが、用意の切り返しがある。これは次回検討してみたい。
△85歩▲77角△54歩の手順にメリットだらけではなく、先手は▲88飛と回ることができる。
対して△42玉だと▲86歩△同歩▲同角が狙える。
以下△同飛▲同飛△95角▲83飛打△34歩に▲68銀や▲48玉と王手のラインを消しておくのが好手だ。△82歩には▲同飛成と取れるようになっている。
▲86同角に△32玉と逃げて82の飛車には紐がついているので素抜きはできないが、▲83歩としてペースを握れる。△83同飛は▲31角成、△52飛は▲77角と引いておく。
△42玉はやや疑問だったが、△54歩型で先手が向飛車に構えると常に▲86歩の筋が狙える。
そこで▲76歩に△62銀も考えられる。
▲58飛なら△85歩▲77角△54歩で、▲58飛に限定できている。
△62銀に▲55歩と位を許すが、先手としても▲55歩を保留した方が駒組に含みがある。
具体的には後手は持久戦を目指しやすくなる。
後手は△34歩を保留してるので▲54歩からの早い動きを警戒できている。
タイミングを見て△34歩とつける。
最終図以下は後手は左美濃に組む感じだ。
▲55歩とついてないのに△74歩から△73銀とすると▲66歩で対応しやすくなる。
▲55歩型で▲66歩とすると△64銀から△34歩で55の位が目標になったが、それがない。
後手は▲55歩とつかせるために△34歩が必要になる。
△34歩に▲55歩の一手でもないが、▲66歩では角道を止めた振り飛車に戻るし▲77角は△同角成で、先手で角交換系の振り飛車だと打開できるかが課題になる。後手なら千日手は歓迎だ。
△34歩には堂々と▲55歩とつきたいところだ。
△34歩とついてから△74歩ー△73銀と繰り出すと▲54歩の仕掛けを気にする必要がある。
第3図
△73銀と上がる前に△42銀は手堅い手で、これなら5筋を守っているので▲54歩の仕掛けを牽制している。
しかし持久戦を目指しづらくなる。
お互い銀を繰り出した最終図は、後手が急戦志向か、あくまでも持久戦志向かに分岐する。
これは後手が望めば5手目▲55歩でも▲58飛△34歩▲55歩とつかせた変化でもなる。
この図も奥が深い。
持久戦を目指すならすぐ△44歩としても囲えるが、先手の左銀が自由だ。先手は▲56銀型に組むことができる。
後手は早めに△64銀と繰り出して、▲56銀なら△75歩から角を目標にできるし、▲66銀ならあくまでも急戦にするか、あるいは角道が止まったので持久戦が視野に入る。
序盤のポイント
後手は▲55歩とつかせたい、そのために△34歩とつくと△64銀と繰り出す持久戦はやりづらくなる。
すなわち△42銀の一手が必要になりそう。先手が▲55歩を決めると△34歩を保留できて△64銀型の持久戦を目指しやすくなる。
どちらの場合でも後手は△64銀と繰り出す急戦ができるわけで、余計なことを考えたくない人は△64銀急戦に合流させるのもあり。
5手目に▲55歩としても一局の将棋なので、先手が△54歩を嫌う場合は早めに▲55歩とつくのがおすすめだ。
▲55歩を保留したい場合は先に▲58飛になり、それから△85歩▲77角△54歩とすれば▲88飛を消しているので若干後手が得している。
後手も△62銀▲58飛なら得するが、▲55歩とされたとき全く別の変化になってしまう。△54歩の将棋をやりたい場合は▲88飛を許容して△85歩▲77角△54歩とするのが良いだろう。
お互いちょっとずつ葛藤がある中で、どの変化を選び、どの変化を捨てるか。この序盤の駆け引きこそが実戦ならではの面白さだ。