初手からの指し手

一時期と比べるとやや流行がピークアウトした感のあるこの戦型だが、振り飛車・居飛車双方とも先後を問わずに採用できることから、特にアマチュア間ではいまだ根強い人気を誇っている。

私自身、この形に関してはかなり研究と経験を積んできた自負がある。今回から数回に分けて、振り飛車側が先手番の得を活かす指し回しを解説していきたいと思う。

お互い最もオーソドックスに進めた上図を基本図とする。後手は△32銀を保留することで、▲46歩のように攻撃力に欠ける手を指したときに穴熊に変化する含みを残している。

この局面では
①▲56歩
②▲75歩

の2通りが有力な手段として考えられる。それぞれ少しずつ気になる点があるが、同じような展開になることが多い。なお、③▲56銀の揺さぶりは△44歩と防がれ、石田流に組みづらくなってしまうため得にならない(詳細は後述)

①▲56歩以下の指し手

▲56歩に対して△44歩と突けば、後の変化と合流する。この場合は△12香が少し気になる一手。途中の▲46角はやや無理筋で、最終図まで進むと後手が良い。仕掛けが成立しないと穴熊に組み切られてしまうのでそれを嫌うなら②▲75歩を選ぶのが良いだろう。

なお、▲16歩-△14歩の交換が入っていれば、手順中▲95馬に代えて▲15歩と突くだけでも相当だ。穴熊が絡む変化を研究するときは、端歩の関係に神経質である必要がある。

②▲75歩以下の指し手

▲75歩は△12香に▲56銀の含みを残し、より攻撃的な構え。これに対しても△44歩と突けば穏やかだが、当然ながら△64銀(下図)が気になる一手。

対しては▲68角や▲76銀あたりが常識的な受けだが、△42角▲76銀△32銀の進行は、△33角▲67銀△42角…という揺さぶりの権利を与えているため、先手の作戦としては不満である。

先手は▲65歩(下図)と突くのが用意の一手。対して△53銀と下がるのは弱気で、▲74歩から捌きにいって先手まずまず。△94角に対して▲85角~▲76飛は部分的な手筋で、覚えておいて損はないだろう。

▲65歩に対しては、△77角成▲同飛△65銀▲78飛と進む。次は▲77桂の銀バサミを狙っているため、後手の手段としては
②-1△55歩
②-2△44角

のいずれかが考えられる。続きはまた次回解説する。

③▲56銀以下の指し手

戻って、基本図から▲56銀は駄目というほどではないが、うまくいかない。色々理由はあるが、居飛車が△52金型の場合、△64銀~△55歩のときに▲65歩と反撃できない(△56歩▲64歩が▲63歩成の先手にならない)のが致命的だ。▲67銀と引くしかないのではあまり出た意味がない。

また、主張を作るための7筋交換も、最終図まで普通に進められて逆用された感が満載である。早い段階で▲56銀と出るのは、振り飛車側も穴熊に組む時くらいしか得にならないと思う。

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