研修会のときに指したプロ棋士との駒落ち戦を解説していきます。

今回は研修会D1クラスのときの、大島映二先生(当時七段)との飛車香落ち戦を初手から解説します。

飛車香落ち戦で何をすれば良いか分からない方は、とりあえず1筋に飛車を回って歩交換を目指すのが良い。この指し方は香落ち戦でもかなり有力で、奨励会の対局でよく見かける。

注意する点が2つあるのでみておこう。

1つ目は上手が△44歩と角道を止めていない時だ。この状態ですぐに飛車を回ると・・・

このように△45角と打たれて困る。よって、飛車を回る前に▲68玉と上がる必要がある。

2つ目は上手が1筋の歩交換を許さない対応をしてきた時だ。

こう進むと歩交換が難しいので、△24歩と突かれた場合は飛車を回らずに、▲26歩から2筋の歩交換をするのが良い。

本譜は1筋の歩を交換することができた。ここからどうするか。

1筋の歩交換に成功したら今度は4筋からの攻めを目指すのが良い。上手はそれに備えて71の銀を受けに使った。普通は4筋に飛車を回り直して右四間飛車の形を作るのが良いが、上手の陣形に目を向けると、7筋、8筋に金銀がいなくてがら空きだ。ではどうするか。

8筋からの攻めを狙って向かい飛車の形を作った。守りが弱い所から攻めるのが将棋の基本である。上手は8筋を玉で対応する構えだがいかにも危うい。下手としてはどんどん攻めていきたいがどうするか。

▲85歩から仕掛けていった。△85同桂は▲68角と引いておけば次に▲86歩の狙いが残るため良い。本譜は▲85桂に△83歩と辛抱してきた。どんどん攻めていきたいところだが、一旦自陣を整備しておきたい。どうするか。

▲58金左が勝率の高い一手で、一気に自陣の安定感が増した。というのも、この手をやらないと、上手に桂が入った時に△56歩と突かれる手が気になる。▲56同銀左は△55銀とぶつけられるし、▲56同歩は△57桂が厳しい。▲58金左と上がっておくことでこの手を防ぐことができるのだ。

さて、いよいよ上手陣を攻略したいところだがどうするか。

▲93桂成~▲95歩としたが、あまりオススメしたくない攻め方。本譜の△75歩に代えて△57歩とされていたら嫌だった。▲57同歩は△65桂打が厳しいし、▲68金と逃げるのも1つ楔が入って気持ち悪い。▲93桂成に代えて▲73桂成△同銀▲75歩と玉頭から攻めたほうが良かった。以下△75同歩に▲65桂△82銀▲73歩△62玉▲84歩△同歩▲同飛△83歩▲74飛△71銀▲95角まで進むと下手の攻めがきれいに決まっている。

次の▲72歩成を受けるには△84桂しかないが、▲85歩で下手勝勢だ。

本譜は△75歩~△54金がぬるく、下手の攻めが間に合ってきた。△84桂は必死の防戦。一気に攻めつぶしたいところだがどうするか。

▲95角の飛び出しが決め手。次の▲83成香が分かっていても受からない。以下はそのまま押し切った。

今回のように、上手の金銀が4筋周辺に固まっているのであれば、無理にそこから攻める必要はなく、守りが手薄なところからの戦いを目指すのが良い。また、攻めるのが難しいと感じたら、しっかり玉を囲って駒組をするのも大切だ。色々な状況があって判断が難しいが、実戦を積み重ねていくうちに柔軟な発想が養われるはずだ。この将棋も1つのアイデアとして戦っていただけたら幸いである。

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