研修会にいたときに指した将棋を振り返りたい。
今回は飛車落ちの将棋だ。
相手は当時三段の方だ。現在はプロ棋士として活躍している。
上手は定跡を外す
初手から △62銀▲76歩△74歩▲26歩△73銀▲25歩△32金▲24歩△同歩▲同飛△23歩▲28飛△64銀▲48銀△62玉▲68玉△72玉▲78銀△62金。
研修会の駒落ち将棋は上手側も本気で戦うことが多い。勝つと、対局料とは別に勝ち星に応じて追加でお金をいただける。
上手がプロ棋士の場合は研修会生に花を持たせることもあるが、奨励会員の場合は花を持たせようなんて考えない。
追加でお金を貰えるという理由の他に、わざと悪い手を指すプライドが許さないし、悪い手が手に染み付くことも嫌う。
だから、指導の仕事を引き受けたら本気で戦うし、最初から指導の仕事を引き受けない奨励会員もいる。
飛車落ちは初手から、△34歩▲76歩△44歩とするのが定跡だが、定跡は当然、下手は研究している。
本譜の初手△62銀としたのは定跡を外した手だ。
定跡を外されると、序盤から自力で考えないといけない。序盤から試されている。
序盤は格言通りに
手順 ▲86歩△34歩▲87銀△56歩▲66歩△57歩成▲同玉△53銀上。
図から▲86歩から銀冠を目指した。これは定跡のイメージがあったから指した手だ。定跡では▲86歩ー▲87銀ー▲78玉ー▲68金と組む。
しかしこの場合は、「歩腰銀には歩で対抗」の格言通り、▲66歩△34歩▲67銀と駒組みするのが勝った。
下手は定跡に縛られずに、柔軟に指すことが大切だった。
▲86歩△34歩には▲79玉と美濃囲いに囲いたい。これも▲87銀ー▲78玉と囲う、という先入観があったから指せなかった。
本譜は▲87銀と上がったが、△56歩をうっかりした。
▲66歩と角道を止めてゆっくりした流れにしようとしたが、△57歩成▲同玉△53銀上から駒組みして、上手まずまずの出だしだ。
チャンスと見ても玉の囲いを優先する
手順 ▲24歩△同歩▲同飛△44歩▲34飛△33角▲36飛△45歩▲26飛△23歩▲68玉。
図からチャンスと見て▲24歩△同歩▲同飛と動いたが、何はともあれ▲68玉と引きたい。▲78玉まで囲えれば一気に固くなる。
不安定な玉形で戦っても良いことはない。仮に形勢が良くなっても、勝ちにくさが残る。玉を囲うのは優先事項だ。
▲24同飛に△23歩は▲34飛で十字飛車だが、△44歩▲34飛△33角と受けられて今一つ。
△33角以下、▲36飛△45歩▲26飛△23歩に▲68玉としたが、すでに△45歩とぶつかっているので囲うのが遅い印象だ。
敗着
手順 ▲37桂△15角。
図はまだ下手の優位が残っている。
ここでも▲78玉と寄るのが大きい一手だ。しかしここまでの戦いの中で、いくらでも▲78玉と寄るタイミングはあった。
△39歩成と嫌味がついているので、この局面でじっと▲78玉は指しづらくなっている。
この局面で▲78玉と指せなかったことを反省するよりも、もっと早く▲78玉と寄る手を指せなかったことを反省するべきだ。
ソフトが登場した現代将棋では評価値を落とした手に注目しがちだが、人間同士の将棋では戦いの流れが大事になってくる。
本局はチャンスと見て不安定な玉形でガンガン攻めていったが、チャンスと見ても玉の囲いを優先する、ということを覚えておきたい。