今回、2022年11月25日に行われた叡王戦段位別予選九段戦、▲三浦弘行九段対△深浦康市九段戦の解説をさせていただく。
初手から▲26歩△84歩▲25歩△85歩▲76歩△32金▲77角△34歩▲68銀△77角成▲同銀△22銀。
戦型は角換わりになった。ここまではよくある進行で、ここから序盤の駆け引きが始まる。
▲16歩△14歩▲38銀△64歩▲68玉△33銀▲36歩△62銀▲37桂△52金。
▲16歩は端を受けるか相手に打診してから戦いの方針を決める一手。
後手が端歩を受けずに△33銀と上がったら▲15歩と端の位を主張にして戦うし、本譜のように△14歩と受けてこられたら、端を絡めた▲45桂の速攻を視野に入れつつ駒組みをしていく感じだ。
後手としては端を絡めた▲45桂の速攻は避けつつ、理想的な駒組みをしたいところだ。
ここからは後手の61金の態度を保留できるかどうかの駆け引きが始まる。先手としては、後手に△62金型をスムーズに作られたくないので、速攻を見せて△52金と上がらせたい。
本譜の▲38銀は最速での速攻を目指した一手。
代えて▲48銀と上がる手もあって、その利点は、そこで後手が△72銀とした時に、▲24歩△同歩▲同飛と交換することが可能なことだ。
48銀型であるために△13角がないし、△86歩▲同歩△88歩▲同銀△33角▲34飛となった時に、82飛車が32金に利いていないために、△88角成とする手ができなくなっている。
しかし、▲48銀に対しては、ギリギリまで飛車利きを通す△64歩が有力で、以下▲36歩△62銀▲37桂△42玉▲46歩△63銀と対応された時に先手はすぐに仕掛けることができない。
変化
▲45桂と跳ねても、△33銀と上がっていないために空振りになってしまうのだ。
このように、▲45桂の速攻を防ぐためには△33銀を早めに上がらずに駒組みをするのが良い。
後手は▲78金と上がったら△33銀と上がるイメージで、69金型より78金型で仕掛けられた方が、4筋方面が薄いために対応がしやすいのだ。
先手はここから▲78金△33銀▲68玉からもう少し駒組みをしてから仕掛けることになり、そちらも有力だが、スピード感を求めるなら本譜の▲38銀と上がる方が良い。
▲38銀に対して、本譜は△64歩だったが、△52金を保留するなら△72銀も有力で、以下▲36歩△64歩▲37桂△63銀▲46歩△42玉▲68玉△74歩とできるだけ△33銀と上がらずに駒組みを進めることができる。
途中、△64歩と突いた局面と、△42玉とした局面では、どちらも▲24歩と交換する手があるので、ここがクリアできるかが鍵となる。
本譜の△64歩は先手が▲36歩としてくれれば△72銀で合流するが、本譜の▲68玉がそれを許さない一手。
△72銀に代えて△64歩としているので、後手からの早繰り銀が脅威では無くなっている。
よって後手は駒組みを進めることになるが、△72銀とすると、▲24歩△同歩▲同飛と交換されてしまう。
▲36歩に代えて▲68玉としているので、△55角が19香取りと△86歩▲同歩△88歩の両狙いにならないからだ。
また、△42玉と対応する手はあるが、先手に早繰り銀をされた時に当たりが強い可能性があって指しにくい印象だ。
本譜の△33銀は一番無難な対応だが、先手は▲78金と上がっていないためにまで速攻を目指すことが可能だ。
△33銀以下▲36歩△62銀▲37桂と進み、遂に△52金と上がった。
△52金に代えて△42玉▲46歩△63銀とすると、▲35歩△同歩▲45桂△22銀▲15歩のような感じで▲45桂速攻をされてしまう。この仕掛けを受けきるのは大変な印象なので、本譜の△52金は無難な対応だといえる。
先手は序盤の駆け引きで少し得をしたように見えるが、深浦先生は△52金と上がった後に△62金と寄る作戦を多く指されていらっしゃるので、最初から△52金と上がるつもりだった可能性も高く、駆け引きがあるようで無かったのかもしれない。
▲46歩△74歩▲78金△73桂▲47銀△63銀▲96歩△94歩。
このあたりは駆け引きがあるわけではないが、一応後手は右玉にする含みを見せつつ駒組みを進めている。
本譜は▲58金型で構えた。▲48金~▲29飛と駒組みをするのが多く、本譜の駒組みは少数派という認識だ。
ここから先手は仕掛けていく。