奨励会1級のときに指した将棋を紹介します。

この局面は角換わりの激しい終盤戦で、後手の私が△67 銀と打ち込んだ所。

次に△76 銀成と取った手が△87 成銀▲同玉△75 桂や、△78 金▲同玉△67 銀▲88 玉△87 成銀▲同玉△86 歩などの詰めろになっているし、受けても一手一手。後手玉には詰めろがかからなそうなので対局中は勝ちだと思っていたのだが・・・

▲71 角△63 金▲72 角△76 銀成▲81 角成△67 銀。

▲71 角!そんな手があったか!!!

△同飛は▲53 角の王手飛車取りだから取れないし、放置すると▲53 角打以下後手玉は詰みだ。どうにかして受ける必要があるが、△41 桂とかでは▲53 角打△同桂▲同角成△51 玉▲33 桂成りで寄ってしまう。

いやーもしかしてやばい?いや、△63 金と寄って▲53 角打に△52 玉を用意すれば大丈夫か?しかし、▲72 角と打たれたらどうなってる?金取って飛車取られた時に先手玉は詰むのか?そもそもその局面って後手玉は詰めろになってるのか?そうこう考えているうちに秒読みに突入。

とりあえず△63 金と指したが当然相手は▲72 角と打ってくる。最後先手玉は詰まなそうだけど、後手玉が詰めろになってるのか読み切れない。金を取らずに△86 桂も▲79 歩と受けられて詰めろが続かなそうか。分からないままに △76 銀成とするが▲81 角成と飛車を外される。こうなると先手玉を詰ますか、後手玉が詰まないことに賭けて詰めろをかけるかしかないが、やっぱり飛車がいないと△87 成銀からの筋も△78 金からの筋も詰まない。仕方なく△67 銀と詰めろをかけて下駄を預けた。

▲41 飛△52 玉▲53 桂成△41 玉▲63 馬△31 玉▲42 成桂△同金▲32 歩△同金▲53 角成△42 歩▲投了

▲41 飛!これは詰まないと読んでいた手。△41 同玉なら詰みだが、△52 玉とかわせばわずかに詰まない。なんとか助かった。

実際はこの局面は詰んでいたのか。感想戦で改めて考えてみると▲33 桂成から詰むのが分かった。

▲33 桂成△同玉▲44 銀△34 玉▲35 銀△33 玉▲44 銀△42 玉▲41 飛△52 玉▲53 銀成△41 玉▲63 馬△31 玉▲42 成銀△同玉▲53 角成△33 玉▲44 金。

先に 33 の銀を剥がしておくのが重要で、▲33 桂成に△33 同金なら今度こそ▲41 飛と打てば詰む。△33 同玉以下も長いがしっかり詰んでいる。手順中△34玉で△42玉としても同じように詰む。

▲71角△63金▲72角と打たれて負けコースに入っていたのかー相手強いなーと思っていたのだが、家に帰ってソフトで検討してみると、後手には更なる絶妙手があったのだ。その手を紹介する前に先手の勝ち筋を見ていきたい。

▲33 桂成△同金▲53 銀△同金▲31 角△同玉▲53 角成△42 銀▲52 馬。

なんと▲72 角が悪手らしく、代えて▲33 桂成なら先手勝ち筋。△33 同玉なら▲51 角△43玉▲44 銀で、△52 玉は▲53 銀成以下寄り。△34 玉は▲35 銀△43 玉▲44 銀△34 玉▲35 歩△45 玉▲24 角成が▲34 馬以下の詰めろになるため先手勝ち。従って、▲33 桂成には△33同金と取ることになるが、▲53 銀△同金▲31 角が好手で一気に寄り形となる。
対局中は▲72 角しか読んでいなかったために全く気がついていなかった。
では、▲72 角はどうして悪手なのか。実はそこで絶妙手が隠されていた。

△97 銀▲同香△86 桂。

△97 銀!が絶妙手。▲97 同玉や、▲97 同桂は△76 銀成が詰めろになるため、▲97 同香になるが、そこで△86 桂が素晴らしい組み合わせ。香を吊り上げた効果で、▲79 歩と受けられても△76 銀成が△98 金までの詰めろになる仕組みだ。▲86同歩にも△76銀成または△71飛▲63角成△87銀以下詰みを狙える。これではっきり後手勝ちかというとそうではない。この後も凄まじい応酬が繰り広げられる。

▲53 銀△51 玉▲62 角成△同金▲77 金△72 金▲67 金△62 金▲73 銀△同金▲33 桂成△61玉▲74 歩△63 金▲86 歩△87 銀▲77 玉△53 金▲73 桂△52 玉▲81 桂成△33 金。

△86 桂に対して▲53 銀に△51 玉。そこで▲77 金と引いて受けると△71 飛ではっきりまずい。▲63 角成としたいが、71 の飛車が利いてくるため先手玉が詰んでしまうし、▲67 金とすると、△53 金▲同桂成△72 飛がぴったりだ。▲73 歩としても△78 銀が△99 角以下の詰めろになってしまう。

よって、▲53 銀△51 玉▲62 角成!△同金▲77 金とひねりを加えて受ける。角を先に取られて一手損に見えるので意味が分からないが、先ほどは二枚目の角を取られた時に先手玉が詰めろになっているために受けに回るしかなく、手番が後手に渡っていたが、今度は△72 金▲67 金で、逆に後手玉が詰めろになるために、手番が先手に回ってくるという理屈だ。その後も激しい攻防で難しいが、進めていくと後手が勝っていそうだ。△97 銀と放り込んで後手勝ちとか将棋恐ろしすぎる笑。終盤に潜む好手が多く、とても面白い将棋だった。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA