今日行われた、第77回全日本アマチュア将棋名人戦の東京都予選の将棋を振り返りたいと思う。自戦解説ではなく他戦解説になるので、最善手を求めた解説にしようと思う。

予選は2勝通過2敗失格で、通過した後は決勝トーナメントが行われる。東京都予選は強豪が多く、予選を抜けるだけでもとても大変だ。持ち時間は20分30秒。

先手が私で、相手は振り飛車党だ。

序盤のポイント

本譜は△54歩とした。

序盤は最善手よりも好き嫌いが現れ、それが将棋の醍醐味だ。自分の得意としている形に持ち込むことが勝つコツだったりする。もちろん△54歩でも一局だが、先手が形を決めていないので少し損な指し方になる。

後手が△54歩を突きたいのは先手が▲56歩とついたときと、先手が左美濃の態度を示したときだ。▲78銀や▲86歩を見てから△54歩としたい。

居飛車が穴熊で、振り飛車が美濃囲いの駒組を嫌う振り飛車党は多いが、代償があれば穴熊は怖くない。例えば、△54歩に代えて△52金左▲88玉△94歩▲96歩△72銀▲58金右△71玉として、▲98香なら△43銀▲99玉△35歩から石田流を目指す。▲78銀や▲86歩なら△54歩ー△53銀を目指す。もちろん、左美濃にも石田流を目指す順も有力だ。

途中△62玉型で待機しているのは、トマホークを狙っているから。△93桂ー△85桂と攻めたとき戦場から玉が遠いほうがいい。△71玉の前に9筋を打診したい。

以下駒組が続き、相穴熊になった。先手は▲56歩を保留しているのが工夫になる。その分1手早く▲68銀と固めることができて、後手の穴熊より固い。さらに飛車の可動域も広い。このような展開は先手作戦勝ちで、かつ勝ちやすい。最終手▲75歩から動いていった。歩を交換すると攻め味が増える。

中盤のポイント

本譜▲46歩△33桂▲45歩△同桂▲46歩△37桂成▲同桂△36歩▲35歩△37歩成▲34歩△26角。

▲46歩から動いていったが、後手の飛角桂を捌かせてしまった。さらにと金ができている。先手の角が働いておらず、形勢は互角になってしまった。振り飛車は固さには劣るが、その代わりに金を前線に出して押さえ込みを狙った指し方で、受けがしっかりしてる。

戻って△75歩の図。先手の角の働きが悪く後手の角の働きが良い。そこで▲77角はどうだろう。角交換になれば先手の憂いがなくなる。以下△55歩なら▲56歩の要領。先手の穴熊のほうが固いので、角金交換の駒損になっても食いつきたい。

中盤戦では、手を読むことよりまず最初に形勢判断が重要になる。形勢をどう見るかで、攻めるのか受けるのかが変わるからだ。

形勢判断の基本は、玉の固さ駒の損得駒の働き、そして手番

ざっくり、2つなら互角、3つあれば有利だと思っていい。上の図を例に挙げると、玉の固さは先手、駒の損得はなし、駒の効率は先手の角が懸念点、手番は先手。すると自然に「角をどうするか」という発想になって、それから読みが始まる。

終盤だと駒の損得や働きのうんぬんよりも、「玉が詰むか詰まないか」が形勢判断に直結するので、形勢判断の基本の4要素はある時点から使えなくなる。その点には注意が必要だ。

終盤のポイント

本譜▲74歩△同金▲63銀△73金▲72歩△同金上▲同銀成△同金▲74香△63銀▲64金。

局面は先手が駒得で、玉は固く、手番を握っている。形勢判断の基本の4要素からして、はっきり先手良しといっていい。終盤の寄せのポイントは、「1枚ずつはがす」と「金を狙う」だ。これは多くの局面で使える。

本譜の▲74歩以下の手順はこの2つの格言に忠実で、よい順だ。ちなみに最後の▲64金は「金を狙う」の意図とは外れていて、▲72香成△同銀▲95角もあった。しかし、寄せの要の駒を残していて「1枚ずつはがす」には合っているので正解だ。

まとめ

本局は、序盤は居飛車の作戦勝ちから始まった。その理由の一つは玉の固さにある。振り飛車としては、単純に組み合うのも一局ではあるが、穴熊に組ませないあるいはその代償を求める指し方を考える余地があると思う。その一案として石田流に組む、があった。

中盤は、お互いの持ち味が出た。振り飛車は押さえ込みを狙った指し方が良かった。受けの基本が身についていて、容易には崩れない強さがある。穴熊より美濃囲いをして、相手の攻めを吸収する指し方のほうが合っているように感じた。

穴熊は一度悪くなると挽回が難しい。振り飛車としては苦しい時間が長かった。居飛車の終盤は最善手ではないものの良さをキープする指し方で、踏み込みに欠けるという見方もできるが、良さを維持するのも力がいる。熱戦でいい将棋だった。

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