第1図
4手目△94歩と打診するのは、振り飛車を視野に入れた指し方だ。
△95歩の位を取れて持久戦になると嬉しい。早い展開よりも持久戦の方が位は生きる。先手番だと千日手が嫌なので打開が課題に入るが、後手は別に打開しなくてもよい。後手番だと待ってもよいのだ。
千日手があるので、先後の差で考え方が変わる。
△95歩と早めに位を取って、「後手の私は待ちますが、持久戦になるとこちらが得しますよ。打開してください。」と先手にプレッシャーをかけている。
その点先手は序盤から緊張感がある。
△95歩と取れた将棋はまたにして、今回は▲96歩と受けてきたときの端の生かし方を調べてみたい。
具体的な生かし方がないと、△94歩の打診の意味がなくなる。
9筋の生かし方は複数ある。
生かし方の一つは、ゴキゲン中飛車にして△56歩と仕掛ける順だ。
9筋の交換がないと後手不満だった戦型も、9筋の交換があると将来△95歩と端攻めができるので後手も戦える。
▲35歩△同歩▲34歩は真っ向から咎めにいった強い手だが、△45桂が切り返し。
▲45同銀と取ると、△76飛▲77角にやはり△95歩が急所だ。▲同歩だと△98歩▲同香△97歩▲同香△96歩で後手良しになる。
△95歩は取れないが、△96歩の取り込みも大きい。
△64角は次に△57桂成を狙っている。▲26飛はそれを避けた手だが、△76飛▲77桂にやはり△95歩がくる。
9筋の交換が生きる変化だ。
▲35歩と攻めずに▲68銀と囲う手も考えられる。
次に▲35歩と突かれると困るので、△44歩と備える。
△44角がなくなったのを見て、▲24歩△同歩▲同飛△23歩▲26飛と形良く歩交換をする。
後手は△45歩と銀を追うが、▲57銀引ー▲66銀の組み換えの味がいい。
後手は△45歩と突いてしまったので、▲35歩がある。
▲35歩に△43銀と受けても▲16角の追撃がある。
△62角で一回は凌げるが、▲36飛△35角に▲16角が急所のラインだ。▲36飛に△35歩も▲26飛△43銀に▲16角が▲43角成と▲34歩を見て厳しい。
最終図以下、△43銀や△43金は▲35飛△同歩▲34歩で先手良し。
▲68銀には後手はどう9筋を生かすか。
△45歩の前に△95歩とする手がある。
▲同歩に△45歩▲57銀引△同飛成と飛車を切っていく。▲同銀△44角▲35歩△99角成で二枚替えになる。
▲35歩△同角は▲56飛△65銀▲55飛で受かる。
△99角成のとき△95歩▲同歩がないと、▲66角で先手指せる。△95歩▲同歩を入れると、▲66角に△98歩と打つことができる。これが大きい。
△98歩は次に△64香や△66馬▲同銀△99歩成を見ていて、後手の攻めが繋がっている。
この攻め筋を警戒して、▲68金と上がる手もある。
同じように進んだとき▲88銀と上がることができる。▲88銀で▲66角もあるが、△同馬▲同歩△97歩で攻めが続く。▲97同桂には△53角がある。
▲88銀に△69銀▲79玉△78香と追撃するが、後手の攻めが重い。
難しいところもあるが、この順は後手も選びづらいだろう。
9筋の交換が生きる変化も多かったが、直接的にどう生かすかは難しいところだ。
先手がこれらの変化を避けるなら、▲78玉と寄らず▲58金右とする手もある。持久戦を目指した手だ。
これなら後手に9筋の交換を生かされることはない。
今回は9筋を受けてきた場合のゴキゲン中飛車を検討したが、『都成流新型ダイレクト向かい飛車』では9筋が取れた場合の変化も、9筋を受けてきた場合の生かし方もたくさん載っている。
△95歩と取れた将棋ばかり研究して、「▲96歩と受けてきたらどうしよう」と序盤早々不安に思うことがなくなるだろう。
6手目の△94歩の打診はまた意味が異なる。
振り飛車党が△94歩とする場合は、△95歩と取れた場合と▲96歩と受けてきた場合とで、駒組を変える意味がある。
オールラウンダー(居飛車も振り飛車も指せる人)の場合は、△95歩と取れたら振り飛車、▲96歩と受けてきたら居飛車にする、という思想で指すケースが多そうだ。
9筋が入って後手雁木にすると、▲95角の筋がないので少し後手が得する。
4手目の△94歩▲96歩と受けてきた場合、△44歩なら6手目△94歩と合流するが、△44歩の他にゴキゲン中飛車や角交換系の振り飛車の可能性が生まれる。
ただ△94歩▲25歩△95歩の力戦調の戦いは覚悟する必要がある。