すぐに役立つ戦術を紹介したい。

今回は5手目▲25歩についてだ。

目次

第1図 ▲25歩を突かない場合

初手から ▲26歩△34歩▲76歩△44歩▲48銀△84歩▲68玉△85歩▲77角△32銀▲46歩△43銀▲25歩△32金▲24歩△同歩▲同飛△23歩。

後手が振り飛車党の場合、5手目▲25歩と突くと△22飛と向飛車にする変化を与えるので、メリットはほぼない。

後手が居飛車党の場合、5手目▲25歩と突くメリットとデメリットがある。

5手目▲25歩のメリットを見ていきたい。

▲25歩を決めない方が△32銀型の雁木を目指されたとき、先手の駒組みの含みは多い。

△32銀型の雁木に組むメリットは、こちらの記事で検討した。

▲25歩△33角を入れない場合、△32銀に反応して▲46歩と突く手が考えられる。

次に▲45歩を狙っていて、△43銀と上がっても▲25歩△33角▲45歩と仕掛けることができる。

▲25歩△33角が入っていると、▲46歩と突く手が先手にならない

後手としては△32銀と上がる前に△84歩ー△85歩を決めて、▲77角と上がらせてから△32銀▲46歩△43銀▲25歩△32金とする順が有力。

2筋の歩交換を許すが、その分△74歩ー△73銀ー△64銀と繰り出して先手の角を目標にする作戦だ。

これは一局の将棋だ。

△32銀型には第1図の変化の対策もあるが、居玉で▲37銀と上がる対策が有力視されている。

こちらで検討した変化だ。

▲37銀と上がる作戦を選ぶなら、5手目▲25歩を決めても問題ない。

第1図の変化で△84歩に▲25歩とすれば合流するので、7手目▲25歩でもよい。

第2図 先手嫌ではないが、矢倉の変化もある

手順 △32銀▲25歩△33銀▲46歩△32金▲47銀△84歩▲78銀△52金▲68玉△43金右▲58金右△85歩▲36歩△62銀▲37桂△54歩▲56銀△41玉▲79玉。

△32銀と上がってから▲25歩と決めると、△33銀から矢倉に組む変化を与える。

ただ、これは先手が嫌な変化ではない。

△44歩と突いてある矢倉には右四間飛車調で指すのが有力だ。この対策が優秀とされている。

だから、初手から▲76歩△84歩▲68銀△34歩の先手矢倉も、5手目▲66歩ではなく▲77銀と上がっている。

途中、△85歩に▲77角と受けずに▲36歩ー▲37桂と駒組みを急ぐのがポイントだ。

一手でも早く仕掛ける態勢を作りたい。

最終図が先手の理想形だ。

この本は、上と下に分かれていて、矢倉の5手目▲77銀と▲66歩を深く比較している。

平成の頃に書かれた本で、▲66歩が本命視されている。

昭和の頃は、5手目▲77銀だった。

平成に入ると5手目▲66歩になる。理由の一つに、後手が急戦模様に指す将棋が増えたことがある。

5手目▲77銀と上がると中央が薄くなるので、5筋から動く筋がやりやすくなる。

また、△85歩を決めていないので△52飛や△62飛と回りやすい。飛車を横に動かす展開だと△85歩の一手が不要だし、△85桂と跳ねる余地もある

それが、平成の終わりになると5手目▲77銀に戻る。

第2図の矢倉対策をソフトが指していて、これが優秀だった。

5手目▲66歩と突くと6筋が争点になるので、▲77銀と上がり、▲66歩を保留する指し方に戻った。

結論が今と違うから過去の研究や棋譜を学ばなくてもよい、ということではない。

こちらの記事のように戦型がそのまま現代でも現れるケースもあるし、戦型が一緒でなくても考え方が生きるケースもある。

現代の将棋は研究色が強く、棋譜並べをしていても単調に感じられる。一方、昭和の将棋は棋士それぞれの個性が現れ、終盤は手の良し悪しを超えた人間ドラマを感じる。

個人的には、昭和の頃の棋譜並べの方が楽しい。

第3図 5手目▲25歩と突く

手順 ▲25歩△32金▲24歩△同歩▲同飛△42銀▲34飛。

5手目▲25歩と突けば、第1図と第2図を避けることができる。

▲25歩に△32金▲24歩△同歩▲同飛△42銀と△43銀型に組もうとしても、一手遅いので▲34飛と取ることができる。

一歩得して先手ペースだ。

相手が居飛車党の場合、5手目▲25歩とすれば後手が選べる作戦が減る

第1図と第2図の変化が気にならないなら、▲25歩のタイミングはいつでもよい。

第4図 相手が振り飛車党の場合

手順 △22飛▲78玉△62玉▲58金右△52金左▲56歩△72銀▲57銀△71玉▲46銀△82玉▲35歩△32飛▲68金寄。

相手が振り飛車党の場合、▲25歩を決めると△22飛と回られるが、▲46銀急戦をやる場合は合流する。

▲46銀ー▲35歩と仕掛け、△同歩は▲38飛で先手指せる。

▲35歩に△32飛が勝るが、これだと四間飛車のときと一緒だ。

△32飛に▲68金寄として、こちらの記事の変化に合流する。

▲46銀に代えて▲77角から穴熊を目指してくれれば、どこかで△24歩▲同歩△同飛と動く筋がある。

向飛車にしたことで▲46銀ー▲35歩の急戦に誘導したという見方もできるが、せっかく向飛車にできたのに結局四間飛車の変化に合流するのでは後手不満だろう。

振り飛車側が5手目▲25歩を咎めるのも容易ではないが、振り飛車党相手には▲25歩を決めない方が無難だ。

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