奨励会1級のときに指した将棋を紹介します。

この局面は先手中飛車対居飛車の中盤戦。相手が▲46歩と突いた所で、後手の私の手番。

先手が良い陣形なのに対し、後手は73の銀の働きが悪いため作戦負け。後手としてはこの銀をなんとかしたい所。さてどうするか。

△75歩▲同歩△76歩▲85桂△84銀。

△75歩~△84銀で攻めに活路を見出したが、これは悪い見本だった。相手玉から遠く離れた場所で銀を攻めに使うのはやはり得策ではなかった。こういう局面で焦ってはいけない。代えて△62銀と落ち着いて自陣に近づけるのが正着だった。その変化は後ほど解説する。

本譜の△75歩~△84銀はそこで▲86歩に△77歩成▲同角△75銀という読みだが、それでも攻めがゆっくりしすぎで、中途半端な感じがあるし、当然▲86歩の一手では無かった。

▲45歩△85銀▲47銀△58飛成▲同金左。

▲45歩△85銀に▲47銀と引かれて困った。飛車交換を拒否して△82飛や、△53金は▲44歩と取り込まれて苦しい。本譜は△58飛成としたが、▲同金左と味良く取り返されてしまった。こうなると、先手は綺麗なダイヤモンド美濃なのに対し、後手は85の銀が取り残されてしまっているので後手がはっきり苦しいのが分かる。更に言うと、▲45歩と突かずに単に▲47銀と引かれていたらより苦しかった。飛車交換になった時に、▲45歩と突いていない分、一手早く飛車を打ち下ろすことができる。

複数の手段で局面が悪くなるのだから△75歩~△84銀は論外だった。▲47銀という発想が無かったとはいえ、実行してはいけない手順だったのだ。将棋の一手は△62銀であった。

△62銀▲45歩△63銀。

△62銀に対して▲45歩と突っかけてきそうだが、そこで△63銀と陣形を立て直すのが大人の戦い方。銀の位置が73と63では働きも守備力も格段にパワーアップしている。

ここで先手はどのように指し進めるかが難しい。

▲44歩△同金▲48飛△56飛▲44角△46歩。

▲44歩~▲48飛は積極的な指し方。56の銀と引き換えに44の金を取ってしまう狙い。しかし、最後△46歩と打たれてみると、飛車が抑え込まれてしまい先手不満。△56飛に対して▲44飛△66飛▲41飛成の切り合いも考えられるが、△67飛成で形勢不明。作戦負け気味だった後手からするとこの展開になるなら満足だろう。先手としてはじっくりと良さを求めていきたい所。

▲44歩△同金▲45歩△54金▲55歩△53金。

じっくり指すなら▲44歩△同金に▲45歩~▲55歩と押さえ込むのが良いだろう。これで二つの位の確保に成功した。後はこの位を生かして厚く指せばはっきり先手が指しやすくなるのだが・・・

▲36歩△43金▲37桂△24歩▲47銀上△65歩▲同銀△73桂▲56銀△64銀▲38金△65歩。

▲36歩〜▲37桂で33の角に圧力をかけつつ、▲47銀上から木村美濃の組み換えを図る。しかし、銀を上がってバラバラになった瞬間に△65歩と突くのが機敏な一手。▲65同桂は△64歩でまずいので▲65同銀だが、△73桂~△64銀で後手の駒が一気に使えてくる。こうなればむしろ後手が指しやすくなっている。先手は▲36歩以外に▲48飛や、▲68金など色々な手があるが、意外にもどれも難しい。最初の局面では後手作戦負けだと思っていたが、△62銀~△63銀で良い勝負という感覚を持たなければいけなかった。こういう所で強い人と差ができるんだろうな~

この将棋は順当に負けました(泣)

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