今回は角換わりで、△63金型の右玉の将棋を検討したい。
かなり難解な変化だ。
目次
第1図 テーマ図
手順 ▲69玉△44歩▲79玉△63金▲88玉△62玉。
図から▲69玉と手番を調整する。代えて▲79玉△42玉は後手が戦えるとされている。
▲69玉と手番をずらす理屈はこちらの記事で検討した。
今回は▲69玉に対して、△44歩▲79玉△63金▲88玉△62玉と右玉にする変化を検討したい。
第2図 ▲67銀△43銀に▲28飛とする変化
手順 ▲67銀△43銀▲28飛。
▲67銀と固める変化を見ていきたい。ここもいろいろあるところだ。
対して△42金▲56歩△32金と待機すると、▲59飛と回って次に▲55歩の位が取れる。▲55歩の位は大きい。
▲56歩に△43銀と引いても▲55歩と位が取れる。
▲67銀に△43銀と引いたのは、▲56歩に△54歩と合わせられるようにするためだ。歩が向かい合うと先手は打開しづらい。
▲67銀に△65歩と攻めるのは危険で、▲同歩△同銀▲69飛で逆襲される。
後手の右玉よりも先手の囲いの方が固いので、後手から戦うのは不自然だ。
△43銀に▲56銀は△54銀で千日手模様だ。先手は△54歩を見て▲56銀と腰掛けたい。▲56銀△54歩の格好になれば、▲45歩△同歩▲同銀と一歩交換ができる。
△43銀に▲28飛と調整する。
第3図 △42金には▲56銀から▲45歩と仕掛ける
手順 △42金▲56銀△54銀▲45歩△同歩▲同桂△44銀▲24歩△46角▲29飛△24角▲22歩△13桂▲15歩△45銀直▲同銀△同銀▲14歩△86歩▲13歩成。
後手は▲56銀には△54銀、▲56歩には△54歩としたい。
△42金と寄るのは先手の手に応じて△54の駒を決めようとする意図だ。
△42金に代えて△72玉と寄るのは駒が偏る。例えば▲27飛△62玉▲29飛と調整し、△72玉には▲56銀△54銀▲45歩△同歩▲同銀△同銀▲同桂△44銀▲52角のような攻め方ができる。
△42金で2筋が弱くなったのを見て▲56銀△54銀▲45歩と仕掛ける。
△45同歩▲同桂△44銀▲24歩で先手好調のようだが、▲28飛型を咎めて△46角が用意の切り返しだ。
もし▲27飛型や▲29飛型だと△46角がないので先手の条件が良い。この違いは他の変化と比較するとき便利なので、覚えておいてほしい。
▲24歩に代えて▲46歩は△32金とされても打開できるか不透明だし、▲46歩に強く△55銀左とぶるける手も有力だ。
△46角▲29飛△24角に▲22角は△33桂で受かる。
▲22歩に△33桂は▲同桂成△同金に▲67桂が好打。次に▲75歩や、将来の▲55桂打を見ている。
△13桂▲15歩に△同歩は▲14角がある。△32金は▲24飛があるので▲23角成が受からない。
△45銀直▲同銀△同銀▲14歩△86歩に▲13歩成と手抜く。
代えて▲86同歩△85歩▲13歩成△86歩▲87歩なら合流するが、▲86同歩に△55桂のような変化を与えるのですぐ▲13歩成が勝る。
この理屈からたどると、△45銀直に代えて△86歩でも▲14歩と取り込んで本線の変化と合流する。
第4図 先手持ち
手順 △87歩成▲同金△86歩▲同銀△85歩▲77銀△86銀▲43歩△52金▲78銀。
図から△87歩成▲同金△86歩▲同銀△85歩と押さえ、▲77銀△86銀と打ち込んでいく。
対して▲43歩と打つのが細かい利かし。△同金や△41金なら▲55桂と攻め合う。
△52金にはそこで▲78銀と埋める。
▲78銀以下、△87銀成▲同銀△86金の千日手狙いは、▲42歩成△同金▲83歩△同飛▲51銀△同玉▲72角で先手良し。
この▲83歩はよく出てくる急所の手だ。
▲43歩を利かさずに単に▲78銀と埋めると、△65歩▲43歩△41金と変化される可能性がある。
△41金と△52金なら玉に近い△52金の方が後手が得のように思われるが、先手から▲44桂や▲83歩△同飛▲41角と攻められたとき、先手の攻めが早くなる。次に王手がかかる格好だ。
△41金なら▲42銀が一瞬遠い攻めになる。
金が遠い方が先手の攻めが遅くなる、という仕組みだ。
最終図は先手持ちだ。後手は▲45歩の局面を避けている。
第5図 △54銀に代えて△54歩
手順 ▲56銀△54歩▲58金△32金。
▲56銀に△54銀と出るのは▲45歩と仕掛けて先手ペースだった。
△54銀に代えて△54歩はどうか。
本当は▲56銀には△54銀、▲56歩には△54歩としたいので妥協した指し方だ。
対して▲45歩△同歩▲同銀は、△65歩▲同歩△同桂▲66銀△64歩と支えてどうか。
▲45同銀の瞬間はスキができやすい。
▲58金には△32金と後手も寄る。
最終図から▲45歩△同歩▲同銀に△65歩なら、今度は▲同歩△同桂▲64歩△同金▲66銀と強く戦って先手良しだ。
▲45同銀には△44歩▲56銀△42銀が予想される。後手は△42銀ー△33桂ー△53銀まで組めれば十分だ。
△42銀に▲24歩は、△同歩▲同飛△46角▲27飛△26歩▲17飛△33桂が気になる。
△42銀に▲48金△33桂としてから▲24歩と行くのも、△同歩▲同飛△25歩がある。
△42銀▲47金としても、△33桂▲24歩△同歩▲同飛△86歩▲同銀△45桂という打開筋がある。
この後手の作戦は、先手が打開できるかどうかというテーマだが、先手陣にスキがあれば後手は千日手を狙わず、攻める姿勢だ。だから先手は打開策を考えつつもスキを作らない駒組みが求められる。
▲24歩と突く組み立てだと、△46角や△45桂の筋が出てくる。これは▲45歩△同歩▲同銀と交換したから生まれた筋だ。
▲45歩と一歩交換したから、後手は△42銀と引きやすくなっている。
▲46歩型のままなら後手は△42銀と引きづらいので、▲45歩とせずに打開する方法を探したい。
第6図 ▲45歩と一歩交換せずに▲26角
手順 ▲26角△72玉▲45歩△62角▲68金右△45歩▲62角成△同玉▲24歩△同歩▲26角。
▲45歩△同歩▲同銀と一歩交換するのは、△44歩▲56銀△42銀と引かれて先手不満。
代えて▲26角が有力だ。
△72玉▲45歩に△同歩は、▲同桂△44銀左▲75歩で先手指せる。以下△同歩は▲74歩△同金▲53桂成がある。
△62角は数の受けだ。
△45歩▲62角成△同玉で攻めが続かないように思うが、▲24歩が好手。
単に▲26角は、△44角▲45桂△26角▲33桂成△37角成で後手指せる。このとき▲24歩△同歩が入っていれば▲43成桂で先手良しだ。
△24同銀にも▲26角と打って攻めが続く。
最終図から△72玉にはやはり▲45桂△44銀左▲75歩の筋があり、この角のラインが受けづらい。
第7図 もう一つのテーマ図
手順 ▲58金△32金▲56銀△54銀。
△42金に▲56銀△54銀▲45歩と仕掛けず、▲58金△32金▲56銀△54銀とする図も考えられる。
これはもう一つのテーマ図だ。
比較1
手順 ▲79玉△44歩▲88玉△41飛▲58金△63金▲28飛△62玉。
第1図から▲69玉と引いたが、▲79玉と引く将棋がある。
▲79玉△42玉▲45桂の仕掛けの成否が分からなかったころ、たくさん指された将棋だ。
▲79玉△44歩▲88玉△41飛に▲58金と寄る手がある。
代えて▲28飛だと△81飛▲58金△65歩と仕掛けられるが、先に▲58金としておけば△81飛に▲45歩と仕掛けることができるという仕組みだ。
その代わりに△38角の打ち込みを与える。
最終図と第7図を比べると、△81飛が△41飛にいる計算になっている。
一手違うだけで全然違う将棋になるから複雑だし、面白い。
比較2
手順 ▲69玉△44歩▲79玉△71飛▲88玉△41飛▲58金。
現在では比較1の▲79玉は見なくなり、▲69玉が主流だ。
だから比較1の最終図は現れないかと思うが、そんなことはなく、重要な課題局面の一つになっている。
▲69玉△44歩▲79玉に△71飛▲88玉△41飛と一手でいけるところを2手かけていけば手番が調整される。
過去の研究が無駄になることの方が多いが、結局合流し、生きることもある。