すぐに役立つ戦術を紹介したい。
今回は後手早石田流の将棋だ。
△72銀と上がる工夫
手順 △35歩▲25歩△32飛▲68玉△72銀。
△35歩と突くのは、早石田流と呼ばれる作戦だ。角道を通したまま三間飛車にするのが特徴だ。
▲25歩△32飛▲68玉に△72銀と上がるのが工夫の一手だ。
△94歩▲96歩を入れないと、▲22角成△同銀▲82角で困る。
9筋の交換を入れることで、▲82角に△93香と上がることができる。
この手を検討する前に、早石田流の歴史を見ていきたい。
△62玉は▲22角成△同銀▲65角が気になる
手順 △62玉▲22角成△同銀▲65角。
△72銀に代えて△62玉と上がるのは、▲22角成△同銀▲65角が気になる。
▲59玉型なら△34角で切り返せるが、▲68玉と上がっているので利かない。
そこで登場した4→3戦法
手順 △42飛▲68玉△62玉▲78玉△72玉▲48銀△35歩▲25歩△32飛。
そこで登場したのが4→3戦法だ。
一回△42飛と回り、△72玉まで囲ってから△32飛と振り直す。
これなら▲22角成△同銀▲65角の筋がないので安全に△32飛とできる。
一時期流行した指し方だ。
しかし後手番での一手損は大きく、先手に淡々と駒組みされても後手が作戦負けになる。
徐々に見かけなくなった。
△42金も一緒
手順 △42金▲48銀△34飛▲22角成△同銀▲88銀△62玉▲78玉△72玉。
△42金と上がる変化も4→3戦法と理屈は一緒。
△42金と上がることで▲22角成△同銀▲65角の筋はケアできているが、将来△32金と戻ることになるのでやはり一手損になる。
△52玉も一緒
手順 △52玉▲48銀△34飛▲22角成△同銀▲88銀△32金▲78玉△62玉。
△52玉と上がるのも、△42金と4→3戦法と手数は同じ。
やはり一手損が響く。
4→3戦法も△42金も△52玉も、後手が一手損する。
後手としては手損なしで△32飛と回ってどうか、という将棋だ。
そこで冒頭の△72銀に戻る。
▲82角は怖くない
手順 ▲22角成△同銀▲82角△36歩▲同歩△93香▲91角成△55角▲77桂△36飛▲37歩△76飛▲78金△95歩▲同歩△97歩。
△72銀と上がると▲22角成△同銀▲82角が怖いが、△36歩▲同歩△93香▲91角成△55角と切り返して後手ペース。
先手の馬より後手の角の方が働きが良い。
▲82角に単に△93香もあるが、▲48銀△36歩▲38金の変化を与えるので先に△36歩と突いている。
△36歩に▲48銀なら△55角▲77桂△37歩成▲同銀△同飛成(△同角成から踏み込むと▲15角の王手飛車がある)▲同桂△同角成とできる。
△62玉を見て▲82角
手順 ▲48銀△62玉▲22角成△同銀▲82角△93香▲77桂△36歩。
すぐの▲22角成△同銀▲82角は後手が対応できた。
▲48銀と上がり、△62玉を見て▲22角成△同銀▲82角とする方が先手の条件が良い。
▲82角に△93香と逃げ、▲77桂と▲85桂を狙った手に対して△36歩と動く。
最終図は先手の角の働きが瞬間悪いのに対し、後手はガンガン動くことができる。
形勢は難解だが、先手が怖い局面だろう。
△71玉と引いて一安心
手順 ▲78玉△34飛▲22角成△同銀▲88銀△71玉。
▲82角と打つのは先手にもリスクがある。
▲78玉から駒組みする変化を見ていきたい。
▲78玉に△71玉も考えられるが、▲24歩△同歩▲同飛と動かれる順が気になる。
▲24歩を防いで、△34飛と浮く。
▲22角成△同銀に▲82角は、△62玉にすぐ▲82角と打った変化と似たイメージで指せる。
▲88銀に△71玉と引いて一安心。
一手損せずに早石田流に組むことができた。
こうした後手の工夫を経て、こちらの記事で検討した△14角の変化に合流する。
後手番の振り飛車は一手一手が繊細だ。