三段リーグで指した将棋を振り返りたい。

この対局は大阪遠征だった。大阪遠征は前日に移動するため、気疲れや体力を消耗することがある。そのため、私も他の三段の人も、遠征する対局はなかなか勝てない、ということが多い。

今回は勝った将棋だが、着地に不安定さが残る一局だった。

しっかりと反省していきたい。

問題図(△86香とした図)

問題図は、先手が私で、後手が相手だ。

後手からの猛攻を受け止め、受け切れた、と思ったところに△75桂▲同歩△86香の勝負手が飛んできた。読みになかった。

私の残り時間は10分ほど。▲86同銀と受けに回るか、それともこの瞬間に後手玉を寄せ切るか、重大な分岐点となった。

ここで三択問題を出したい。

この3択は対局中迷った手だ。いずれも悪い手ではないが、残り10分という状況で一番読みやすく、分かりやすく勝ちだった順を正解にしたい。

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三段リーグ

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△86香の局面。先手は何を指す?

▲86同銀の変化 これが一番分かりやすかったか

手順 ▲86同銀△76桂▲88桂△68桂成▲同玉△87金▲53桂△72玉▲84香。

▲86同銀と受けに回るのが分かりやすかった。△76桂に▲78金は△28竜が嫌味。▲77銀は△85飛だし、▲77角と受けるのも抵抗がある。△28竜に代えて△58金なら▲89玉と早逃げして攻めをかわせる。

△76桂に▲78金打と金を使って受けるのも、後手玉への詰めろがかかりづらくなるのを気にした。

△76桂には、▲88桂と受ける手があった。見えづらい一手だ。

△88同桂成▲同玉△76桂▲97玉△68桂成は、先手に手番が渡るので、▲53桂△72玉▲84香と詰めろをかけて先手勝ち。

▲88桂△68桂成▲同玉に、△87金は詰めろになっていないので、同じように▲53桂△72玉▲84香と詰めろをかけて先手が勝つ。

怖いのは▲68同玉に△67金▲同玉△69竜だが、▲77玉とよけて詰めろがこない。△75歩も▲88桂が利いていて詰めろになっていない。

この順は、言われてみれば、という順で、実戦だと選ぶのは難しいように思う。△86香の瞬間は先手玉は詰まされづらい格好で、この瞬間に寄せ切りたい、という心理が働くからだ。

▲73桂の変化

手順 ▲73桂△同金▲51角打△62桂▲53金△82飛▲84桂。

△86香の瞬間に寄せ切りたい、と思うのが実戦心理だ。自然に追うと、▲53桂△72玉▲84香だが、これが詰めろになっていない。△87香成と取られ、先手負けだ。

▲73桂は鋭い一手だ。

▲73桂△同金に▲51角打は部分的には厳しいが、△62桂がしぶとい。対して▲53金は、△72金打なら▲86銀△76桂▲84香と2手スキで寄せに行ける。後手に金を使わせれば先手玉が安全になる。

▲53金に△52金は▲同金△同銀▲53香△63銀▲52金△72玉▲62角成△82玉▲84歩が、次に▲73馬△同玉▲51角成以下の詰めろとなり、寄せ切れそうだ。

▲53金に△82飛は金を使わない受けだが、▲84桂が▲62金△同飛▲53桂以下の詰めろになる。

▲84桂に△44銀は、▲72香が気付かない好手で、寄せ切れる。

▲84桂に△52金は、▲同金△同銀▲53香△63銀▲62角成△同飛(△同玉は▲51角成△53玉▲45桂で捕まっている)▲51角成△71玉▲61金で、たしかに寄っている。

しかしこの順は難易度が高い。残り10分という状況で指せるか微妙なところだ。

2手スキ・・・詰めろをかけるまで2手かかること。

本譜 ▲53桂の変化

手順 ▲53桂△72玉▲84桂△82玉▲92桂成△同玉▲84香△83桂。

本譜は問題図で秒読みになり、秒に追われて▲53桂と王手した。△72玉に▲84香は詰めろにならず、△87香成とされて先手負けだ。

もちろん一時しのぎで王手したわけではなく、▲84桂△82玉に▲92桂成と成り捨てるのが読み筋だ。△同玉に▲84香とすることで、▲83角以下の詰めろになる。

しかし、△83桂と防がれると詰めろが続かない。

最終図から▲94歩△同歩▲93歩△82玉(△同玉は▲86銀△76桂▲71角以下詰み)▲83香成△同玉▲84歩△同玉▲85金(△同玉は▲86銀△同玉▲87香の詰みを狙える)と上部を厚くすれば先手が残しているが、これも難易度が高い手順だ。

本譜は▲84桂に△73玉

手順 △73玉▲74歩△同銀▲75歩△同銀▲74歩△同玉▲56角△65桂▲86銀△同銀▲65歩△87銀打。

本譜は△73玉とかわした。これには▲51角打が明快な手だった。この手が▲62角成△同玉▲61金以下の詰めろになっていて受けづらい。△71金なら▲86銀と戻せばよい。

▲51角打に気づかず、本譜は▲74歩△同銀▲75歩とした。対して△85銀▲74金△同銀▲同歩△83玉もあったが、本譜は△75同銀と応じた。

△75同銀▲74歩△同玉▲56角が攻防手となり、再び先手が勝ちに近づいたが、△65桂に▲86銀が悪手で形勢が接近した。

△65桂には▲76歩が分かりやすかった。△87香成は▲75歩△同玉▲76歩△85玉▲96銀で先手玉を安全にできる。▲76歩に△同銀も、▲86銀で先手勝ちだ。

▲76歩に、△88金▲同玉△87香成▲同玉△86銀打▲96玉△76銀▲86玉△85銀▲97玉△84飛を嫌ったが、▲65角△同歩▲75銀△同玉▲67桂△64玉▲75金△63玉▲64香と上部を厚くすれば先手が勝っている。

最終図は形勢不明。寄せが中途半端になると、むしろ寄せづらくなる。

結果は幸いしたが、着地は危なかった。

局面の結論と反省

局面の結論は、問題図で▲86同銀、▲73桂、▲53桂のどれを選んでも先手が残している。ただ▲73桂や▲53桂と寄せに行くのは難易度が高いので、▲86同銀と受けに回るのが実戦的だった。

しかし▲86同銀△76桂に▲88桂の受けが見えないと指しづらい。△86香の瞬間に後手玉を寄せたい、と思うのが実戦心理だろう。

残り10分という状況で後手玉を寄せる順を先に考えてしまったため、▲86同銀の順を読む時間が無くなってしまった。こうした場面で、読みの時間配分は個性が出る。これは大変難しいシチュエーションだったと思う。

ただ、寄せが分からないのに寄せに行くのが最も危なく、受けに回る保険を残しておくのが良かっただろう。

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