三段リーグで指した将棋を振り返りたい。
今回の将棋は、序盤で相手の研究に乗ってしまい、早々に形勢を悪くしてしまった。しかし、粘り強く戦っていると勝機が訪れた。
良くなったかな、勝ちになったかな、と思ったときが一番気が緩む。問題図で対応を誤り、頓死してしまった。
問題図(△67角と打たれた図)
問題図は先手が私で、後手が相手だ。本当は私が後手だが、見やすいように先後逆にして検討したい。
▲42飛成に対して、△67角と王手をかけてきた。
ここで二択の問題を出したい。正解は一つだ。
本譜▲58銀と指して頓死
手順 ▲58銀△同と▲同金△同角成▲同玉△67金▲49玉△58銀▲39玉△28金▲48玉△47歩▲37玉△55馬▲26玉△25歩▲同玉△13桂。
本譜は秒に追われ、▲58銀と指した。
▲58金打とすれば詰むことはないが、△同と▲同銀△32金を気にした。問題図手前、△67角に代えて△32金は▲43飛△同金▲同竜以下詰みだ。この読み筋が念頭にあったので、持ち駒を使いたくなかったのだ。しかしこの順を選ぶよりなかった。
対局中▲58銀でもギリギリ詰まないのでは、と思っていた。△同と▲同金△同角成▲同玉△67金▲49玉△58銀▲39玉の局面がパッと頭に浮かび、一枚足りないと思った。
しかしそこで△28金と俗手で王手するのが好手で、ぴったり詰んでいる。以下▲48玉△47歩▲37玉に△55馬と質になっている銀が取れる。▲同歩は△27香成▲46玉△57銀▲56玉△66金まで。
本譜は△55馬に▲26玉としたが、△25歩▲同玉△13桂と活用され、無念の投了。
△58同とから数えて、きれいな21手詰だ。
正着の▲58金打
手順 ▲58金打△同と▲同銀△32金▲43飛△同金▲同竜△12玉▲67銀△69飛▲59金△39金▲同玉△59飛成▲38玉△55馬。
▲58金打とするのが正着だった。
▲58金打も当然読んでいて、最初は△同と▲同銀△32金▲43飛△同金▲同竜△12玉▲67銀が詰めろ逃れの詰めろで勝ちかと思った。
しかし△69飛の合い駒請求が痛い。
▲38玉は△27金▲47玉△67飛成▲57金打△55馬で先手負け。▲67金と竜を取っても△46歩以下長手数で詰む。
▲59金には△39金から追って、△55馬が詰めろ逃れの詰めろで決め手になる。▲同歩は△27金▲47玉△46歩以下簡単な詰み。△55馬に▲13金△同桂▲21角△同玉▲32金△12玉▲22金と詰ましに行っても、△同馬で詰まない。
この順が負けなので▲58金打はできないと思ったのだが・・・
スピードを緩める▲53竜が正着
手順 ▲53竜△12玉▲67銀△同銀成。
△32金には▲43飛と寄せに行かず、▲53竜と緩める手があった。ずっと寄せばかり読んでいたので、緩める手が見えなかった。
最終図、△28香成や△47歩が来る前に、詰めろ詰めろで寄せ切れるだろうか。
手順 ▲23歩△同銀▲44角△22銀▲62飛△42歩▲26角。
一回▲23歩とたたく。これが▲22歩成△同金▲13銀△同桂▲23金が一例で、詰めろになっている。
△23同銀に▲44角と打つ。この手が、詰めろをかけつつ△26香取りになっている攻防手だ。▲44角に△43歩は▲22飛と打ち込んで、△同金は▲同角成△同玉▲33金以下詰み。▲22飛に△13玉も▲21飛成で寄り筋だ。後手は△22銀と駒を使って受けるよりない。
対して▲同角成から寄せに行くのは、先手玉に制約が多くてできない。詰めろをかけ続けるのを諦め、後手の攻めを余しに行くことを考える。
すぐ▲26角と香を取るのは、△47歩▲同金△27金と挟撃の態勢を作って後手良しだ。
よって▲62飛△42歩の交換を入れてから▲26角と戻す。これなら△47歩のたたきがなく、△27金も▲44角とかわして後手の攻めが細い。先手から次に▲15歩の攻めも間に合う情勢だ。
手順 △43金打▲73竜△56角成▲54銀。
△12玉に代えて△43金打も考えられるが、▲73竜△56角成▲54銀として先手良しだ。
先手玉が少しだけ安全になったのが大きい。攻めに専念できる。
局面の結論と反省
本譜は△67角に▲58銀と引いたので頓死してしまった。▲58金打が正着だった。▲58金打のあとも先手が正しく指せれば、先手良しだ。
▲58金打は見えていたが、△同と▲同銀△32金▲43飛△同金▲同竜△12玉▲67銀△69飛で負けだと思い指せなかった。冷静になれば▲53竜から後手の攻めを余す手順が見えるのだが、ずっと後手玉への寄せを読んでいたので、スピードを緩める手が見えなかった。
寄せに行く順ばかり読んでいたのが、悪い方向に影響した。
一つの読みに執着すると、他の手が見えなくなる。1分将棋は視野が狭くなるが、どんな状況でも視野は広くいたい。