相振り飛車は定跡が確立しておらず、力戦になりやすいが、部分的な手筋や工夫は多く見られる。

相居飛車では出てこなかった筋がたくさんでてくる。

指したことがない人は新鮮な気持ちで指せるので、かなり楽しめるだろう。

相振り飛車ではお互いどこに飛車を振るかで、バリエーションがたくさんある。

その中でもオーソドックスな▲向飛車VS△三間飛車を検討してみたい。

第1図

早速だが、後手に序盤のポイントがある。

それが△42銀だ。

この手を指さないと後手は作戦負けになる恐れすらある。

代えて△36歩もあるが、▲同歩△同飛▲38飛とぶつける手もあるし、▲48銀から居飛車にされたとき、△35歩が消えているので△34飛と浮きづらくなっている意味もある。

後手は▲88飛と飛車を振ったのを確認してから△36歩とつきたい。

なぜ△42銀が必要なのか。

第2図

△36同飛のとき▲38銀か、▲28銀か難しい。▲38銀は美濃囲いの可能性があって連結がいいが、端が弱い。▲28銀は金無双の可能性があって端は強いが、壁になる。変化によって損得が出てくる。

美濃囲いと金無双を進化した囲いが矢倉だ。先手は矢倉に組めれば模様が良くなる。

矢倉は手数がかかるので後手の早い動きに対応できるかが勝負だ。

▲38銀や▲28銀は矢倉を視野に入れている。後手は警戒して△33銀~△44銀と繰り出す。

△42銀の効果は一目瞭然だ。△42銀で△72銀だと一手遅い。▲37銀ー▲46歩を許すところだった。

△44銀にも矢倉を目指すとどうなるだろう。

▲46歩に△35銀と出て▲47金が間に合っていない。

しかし▲47金△36歩に▲26銀とぶつければいい勝負だ。

△35銀で拠点をがっちり守るが▲25銀が好手。△44飛には▲48飛と受けておいて次に▲36銀と取る楽しみがある。

▲25銀では▲45銀も似た意味。△24飛と回る余地はあるが、▲38金△26飛▲27歩△24飛▲48玉としておけば次に▲36銀と取る楽しみがある。▲48玉で焦って▲36銀とすると△同銀▲同金△47銀がある。

△32飛に▲34歩としておけば▲36銀といつでも取れる。先手は好きなタイミングで△36歩を取ればよい。

△35銀は銀と銀がぶつかる。先に△36歩と押さえる手の方が良さそうだ。

▲28銀や▲48銀と引くようでは△35銀でもう取り返せないのでここは▲26銀と出る一手。

そこで銀を目標に△33桂ー△24歩ー△25歩を間に合わせる。

途中△32金が大切な手。△25歩を急ぐと▲45歩で困る。

最終図△25歩が間に合って、後手指せる。

ちょっとした工夫で、先に▲46歩とする手もある。

△34飛なら▲47金として△36歩と打つ変化を消している。▲47金△35銀なら▲37銀で合流する。

しかし△46同飛と取る手がある。飛車を追うが△55飛と逃げられ、飛車を取り切れない。

一歩損で、先手陣もバラバラなのでまとめるのは大変だ。

△72銀なら矢倉に組む余地があるが、△42銀を急がれると矢倉に組むのは難しそうだ。△33銀を見たら先手は矢倉を諦めて金無双を目指す。

金無双ならいきなり激しくはならない。お互い駒組に入る。

先手は△33銀に▲86歩を急ぐ。▲58金左△44銀に▲86歩とすると△45銀▲85歩△34飛で8筋の交換ができなくなる恐れがある。

後手は美濃囲いを目指したいが、△82玉まで囲うと8筋の当たりが強くなる意味がある。できれば△71玉で待機したい。

先手に▲85歩まで伸ばされてから△72銀とすると▲84歩△同歩▲82歩がある。△72玉ー△82玉ー△72銀と囲うと△71玉で待機できなくなる。

どうしてもというなら△94歩とついて△72銀とする手もあるが、△94歩の一手がもったいない上に端攻めを誘発する。▲86歩に△72銀とすれば手堅く美濃に囲える。

お互い駒組はあと数手で終わり、これからは攻めの形を考える段階に入る。

後手は銀を前に繰り出したいが、△44銀だと▲84歩と交換できる。

これを嫌って△24銀とする手もあるが、その瞬間に▲65歩が好手だ。▲38金の含みを残すことで角交換しやすくなっている。

後手は角交換しづらいので、▲65歩に△33桂になるが後手の角が使いづらい。この形になるくらいなら△44銀として8筋の交換を許したいところだ。

▲38玉△35銀に▲65歩は危険で、△77角成▲同桂△36歩以下△47銀成で一気に将棋が終わってしまう。

先手も△44銀で次に△45銀や△35銀とされるとまた交換できなくなるので、△44銀の瞬間に歩交換する。

△83歩のとき▲85飛、▲86飛、▲88飛の3ついずれも有力だ。

▲85飛は後手の攻めを牽制する手だが持久戦になったときは先手の飛車が近いので、いずれ▲86飛か▲88飛と引くことになりそうだ。また、▲65歩ー▲75歩となったときも飛車の横ききが止まってしまう。

▲86飛のメリットは▲65歩ー▲75歩の形が良いこと。

最終図以下△33桂か△55歩か。まだまだ駒組が続きそうだ。

▲85飛と引いた場合は▲58金上あたりが一例の進行。

▲85飛と違って▲86飛の場合は△45銀と出ることができる。△45銀のあと△44角、△33桂となれば端攻めが狙える。

△45銀に▲65歩が心配になるが、△77角成▲同桂△33桂が一例で、全軍躍動だ。攻めの飛車角銀桂香のすべてが使えている。

△55角に対していい受け方がない。▲78銀でも▲68金でも形が乱れる。

これはこれで後手にも攻めを繋げる力が必要だが、先手を持ったらしんどいだろう。

▲65歩とつかないで▲75歩として△44角に▲65歩となれば得だが、今度は△84飛を気にする必要がある。

△45銀-△44角ー△33桂の形を作らせまいと、先手は△45銀に▲85飛とする手が登場した。

△33桂と跳ねさせることで△44角を消す狙いだ。▲65歩で先手の角の方が自由になる。

△13角とこちらから使うが、△25桂と跳ねれないので攻めづらい。

▲85飛に△84飛も考えられるが▲45飛△89飛成▲25飛で△24桂と使うのはやや不本意だ。

以下▲35飛△33角▲68金から▲78銀と竜を追い返すことが予想される。後手の竜も大きいのでこの順もやれば大変。

△45銀に▲85飛を避ける意味で△83歩に▲85飛としたときと同じように△54歩から駒組する手もある。

▲85飛よりは先手が得をしているが、これも一局に近い。

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