中飛車に対して、一直線に穴熊を目指した場合を見ていきたい。玉をひたすら固め、金銀4枚くっつける指し方だ。

振り飛車側はいくつか対策がある。(1)同じく穴熊に組む。(2)美濃囲いに組む。そして(3)急戦策だ。

(1)、(2)も有力だが、今回は(3)を見ていきたい。

昭和の頃の将棋は、5筋の位を取って左に玉を囲う将棋が見られた。

5筋の位を取って美濃囲い含みで藤井システム調を狙うのは、藤井奈々女流が得意としている指し方だ。

こうした中飛車+藤井システム調の将棋を指し始めたのは藤井女流だと記憶している。

ここでは、藤井奈々システムと呼ぶことにする。

藤井女流の序盤はいろいろな工夫が見られ、とても楽しい。

第1図

藤井奈々システムの前に、後手の中飛車で△74歩ー△64銀と繰り出す将棋はどうか。

後手は△71玉と美濃囲いを目指さず、△74歩とつく。

先手は▲66歩ー▲67金と上部を備える。後手は銀を繰り出し、△75歩を狙う。

これでも▲98香と穴熊を目指すと△75歩から△84銀と組み換えられて、最終図は早くも後手ペース。

▲98香とするのは危険そうだ。

振り飛車が急戦調とみたら、穴熊を諦めて▲78銀で済ませるのが良さそうだ。

これなら端を攻められても被害は少ない。

最終手▲36歩では▲86歩が自然だが、△95歩▲同歩△同銀の攻めが気になる。

▲36歩は△95歩▲同歩△96歩なら▲37銀△95銀▲98歩として、▲46銀から▲45銀を間に合わせる作戦だ。

後手には端をつめた成果があり、いい勝負だろう。

この作戦をやる場合、後手の9筋のタイミングが大切だ。

第2図

先手の▲77角や▲66歩を見て、△94歩と打診したい。

▲77角と上がる前だと、▲36歩ー▲37銀の急戦策のとき9筋が甘くなる可能性がある。

▲77角と▲66歩は持久戦の手だ。

先手は9筋を受けない手もあるが、持久戦のとき9筋の位は大きい

▲96歩と受けつつ穴熊に組むことができれば嬉しい。

後手も▲98香を見て急戦ができると嬉しい。まだまだ工夫がありそうだ。

△74歩ー△64銀は穴熊を牽制できたが、穴熊を諦めたとき、振り飛車はもう美濃囲いに組みづらくなっている。

そこで美濃囲いの可能性を残しつつ、急戦を狙う指し方だ。

第3図

次は藤井奈々システムだ。

これなら▲48玉ー▲39玉と通常に戻す含みがある。

1筋を打診するタイミングは、第2図と同じ理屈だ。

第2図から△22玉から穴熊を目指すのは危険で、すかさず▲45歩△同歩▲35歩と仕掛けて先手ペースになる。

最終図▲54歩とした局面は先手優勢だ。

△74歩▲48玉の交換を入れて、△22玉としても▲37桂△12香▲25桂△24角▲45歩と攻めて先手良しだ。

もちろん▲37桂では同じように▲45歩もある。

後手はなかなか△22玉と寄りづらい。

△73銀ー△64銀と繰り出して先手陣を牽制するのが良さそうだ。

△22玉と寄ってないと標的がない。先手も▲39玉ー▲28玉と囲って一局だ。

先手は工夫した駒組で、穴熊を牽制することができた。しかし▲36歩で美濃囲いが薄くなっているのでどこまで先手が得をしているかは不明だ。

そこで▲36歩を保留する指し方がある。

第4図

これなら△22玉なら▲36歩、△74歩には▲39玉と使い分けることができる

△22玉▲36歩△12香▲37桂△11玉の進行は、後手番で藤井奈々システムをやるときより得をしている。

以下の進行を応用できる。

後手番での藤井奈々システムを見てみたい。

第5図

この図が基本図になる。

基本図に至る手順で、ポイントの点がある。

一つは何度も出てきた、端を打診するタイミング。▲77角や▲66歩など、持久戦の態度を確認してから打診したい。

もう一つは△53銀を上がるタイミング。

△53銀と上がると▲56歩とつく手がある。

後手は▲66歩や▲88玉を見て△53銀と上がるのが手堅い。

▲88玉と寄ってあれば、▲56歩△同歩以下の進行で△45桂や△44角が厳しくなっている。

自然な▲98香だが、△93桂と跳ねる手がある。

▲99玉と潜る手には、△85桂から△65歩と一歩を取りに行く。

△65歩に▲86歩は△95歩▲85歩△96歩で後手指せる。▲64桂を打ってくれれば攻め駒が入る。△42角の応援がきくのも大きい。

最終図△42角から△95歩を狙って、後手指せる。

△85桂を嫌がって▲86歩とすると、△84歩で8筋が争点になる。

△84歩に▲95歩△同歩▲同香は一回△94歩と打って、▲同香△85歩で後手指せる。

先手の対応はいろいろ考えられるが、最終手の△51玉はよく出てくる指し方だ。△62飛や△63銀上から△82飛を見据えている。

▲85歩と取られても△同桂▲角逃げる△95歩があり、桂馬をただで取られる心配はない。

△93桂を見て▲78玉と裏切るのは有力だ。これだと一気に攻略するのは難しい。

一例の進行例だが、△62飛ー△52金左と組んで△65歩を狙うのはアイディアで、最終図のような感じになれば振り飛車まずまずだろう。

▲98香に代えて▲78金と待つと、△84歩が好手だ。

△85桂と跳ぶ将棋になったとき、▲85歩△同歩と取り返せるようになっていて大きい一手だ。

▲98香なら△93桂と跳ねる。

▲78金はプラスのようでも、▲78玉とかわす余地がなくなっていてむしろ損だ。

△84歩に代えて△74歩は▲98香としやすい。結局△85桂と跳ぶなら△93桂でも一緒で、△74歩の一手が無駄になる。

第6図

使い分けることができるのは後手番でも同じで、▲88玉には△64歩、▲36歩には△71玉とできる。

一直線穴熊に対して、美濃囲いの含みを残しつつ、急戦策を狙うのは有力な作戦だ。

先手でも後手でも似たことができるのは嬉しい。

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