目次
第1図
先手四間飛車に対して、後手がミレニアムを目指すのは流行りの指し方だ。
先手はいくつか対策がある。
第2図
第2図は後手の分岐になる。
一つは△21玉と囲う手だが、これには▲75歩△31金▲78飛と、石田流を目指すことができる。
これも難しいが、今回は△74歩ー△73桂を急ぎ石田流を拒否する指し方を見ていきたい。
△74歩からの指し方は、石田流を防ぐことができるが、ミレニアムの囲いに遅れが出るのが弱点だ。
第3図
△73桂に対して、▲45歩△53角▲65歩と角を使いやすくする。先手は陣形はのびのびとしている。
そして▲47銀引としてダイヤモンド美濃を完成させる。そして▲56歩をつくことで、▲55歩からの仕掛けを見せている。
▲47銀引に△45桂と跳ねるのは、▲46銀△44歩▲45銀△同歩▲33桂で先手良しになる。
△45桂と跳ねる構想ならば、△21玉で△42金寄として▲47銀引に△45桂とした方が勝るが、▲46銀△44歩▲56歩としておいて、後手の桂馬が負担だ。
▲47銀引とすると▲45歩が浮くが、△45桂と跳ねると桂馬が負担になるので、心配しなくてもよい。
△42金寄に先手は仕掛けていく。
第4図
▲44歩が見えづらい好手だ。
単に▲55歩とすると、△同歩▲同角△54歩▲64歩に△55歩▲63歩成△35角で後手良しになる。
このとき▲44歩△同歩があれば▲64歩△55歩に▲63歩成で、今度は先手良しだ。
よって▲64歩に△同歩になり、▲同角△同角▲同飛となって振り飛車が捌けている。
単に▲55歩で、△同歩▲同角△54歩▲77角と引くようでは先手番らしくない。
後手も▲55歩に△86歩▲同歩△55歩としたいが、△86歩に▲54歩△35角▲86歩とされる変化が気になる。
▲44歩△同歩▲55歩に△86歩だと、▲54歩△87歩成▲53歩成△77と▲42と、と踏み込んで先手優勢だ。
▲44歩に△同角も▲同角△同歩▲64歩で、似た筋になる。
▲64同飛に△53金は▲54飛を消した手だが、引いてはくれず当然▲74飛から暴れていく。
△63金で飛車は取られるが、▲75歩と紐をつけておいて先手良しだ。
▲43角のキズもあって、先手が指せる。振り飛車の王様はとにかく固い。
第5図
▲44歩に△86歩▲同歩△44角と対応するのは自然だ。
△86歩に▲43歩成△同金▲86歩と戻すと、△75歩で持ち駒の歩を生かされる。
以下同じように進んだとき、△86飛と走ることができる。
最終図以下▲43歩に△同金なら▲52角で先手指せるが、△41金引のときが難しい。
そこで▲44角と取らずに▲64同飛とする手が考えられる。
これなら△63歩▲74飛△77角成▲同桂△86飛が桂取りにならないので、一手早く攻めることができる。
しかし▲64同飛には△66歩が好手だ。▲66同角は△同角▲同飛△44角で後手指せる。
▲45歩から角を追うが、△79角成と馬を作られてしまう。
最終図以下、▲67飛△89馬▲73歩成△同銀▲65飛か、▲73歩成△66歩▲82と△67歩成▲同金△89馬の変化のどちらかを選ぶことになるが、先手が好んで選ぶかどうかは不明だ。
第6図
▲44歩に△32金寄とする手も有力だ。
後手の狙いはパスなのだが、△94歩とすると▲55歩△44角▲64歩△86歩のとき▲54歩と手抜かれる。
▲63歩成ー▲53歩成が△42金に当たるからだ。
このとき△32金寄なら後手指せるので、△86歩に▲同歩が入る。
△32金寄は▲43歩成ならパスになるが、▲55歩のときに△44角とできるようにした意味がある。
▲43歩成△同金で形を乱されるのが気になるが、後手が歩を持つと次に△86歩▲同歩△75歩の攻めが狙える。
△32金寄があると、△86歩に▲同歩もやむを得ない。
最終手▲64同飛か▲54歩かで、捌くことが予想される。
これはこれで難しいが、こういった展開になると△32金寄の一手は大きい。
▲44歩に△32金寄も有力な一手だ。
2023年10月28日に行われた「将棋文化振興自治体全国将棋サミット2023」の席上対局、藤井猛九段VS久保利明九段戦で、この戦型が現れた。
興味深い戦型の一つだ。