序盤編はこちらから。

前回の続き。

※初手からの手順は上記の動く将棋盤でご確認いただけます。

つばぜり合いの中盤を経て、一歩抜け出したのは後手。
このまま後手が一気に突き放すか、先手が食い下がるかの正念場だ。

再び局面を整理してみる。

玉の堅さ・・・やや先手
駒の効率・・・やや先手
駒の損得・・・後手の銀香得
手番  ・・・後手番

玉形や盤上にいる駒の働きは若干先手が勝っているものの、駒得が大きいので形勢はやや後手有利だ。構図としては前回の中盤編と似ているので、攻めを受け流して駒得をキープすることを考えたくなるが…

ここまで「金持ち喧嘩せず」で、柳に風と受け流してきた後手が、ここで突如牙をむく。
△77角成!当たっていた角で桂を食いちぎり、返す刀で△85桂打と攻め続ける。

以下△49飛まで進んだ上図は玉の堅さが完全に逆転しており、次は△68銀が厳しい詰めろとなる。直前に打った▲23飛も目標物を失って空振り気味だ。駒の損得は互角に戻ったものの、玉形と駒効率で圧倒できるためお釣りがくると見ている。いくら駒得していても最終的には相手の玉を寄せる必要があるので、虎視眈々と踏み込む機会をねらっていたのだ。

これまでの流れを汲むのであれば、代えて△32金が自然に見えるが、すかさず▲22飛成△同金▲75歩(下図)と攻め立てられ、後手難局となる。

1回▲75歩と置いておかれるだけで、次に▲74歩・▲85桂打・▲95歩・▲55角などイヤな手が多すぎて何を受ければいいのかわからない。攻め合おうにもピッタリした手がないので、かなり勝ちづらい展開を強いられるだろう。

比較してみると本譜の△77角成が良いのは一目瞭然だが、状況に応じてしれっと流れを180度転換させるような手をやってのけるあたりが強者たる所以だと思う。

先手もタダ者ではない。何食わぬ顔で(知らんけど)▲28飛成と、ボケてしまった大砲を新たな戦場となった自陣に引き戻す。対する△48歩は地味ながら見習いたい一手で、龍の利きを止めているだけでなく、飛車にヒモを付けて▲38龍などの妨害を予防している点も見逃せない。

▲59歩△同飛成▲68角は手番を握りつつ守り駒を設置する手筋。隋所に勉強になる手が散りばめられている。しかし△49竜と戻られて手が出てこない。▲16角と龍取りに打ちたいが、△27歩が痛い。▲同角に△58竜と逃げられると、△66歩と△26香が残って手段に窮してしまう。かといって、▲38角だとあっさり△同龍▲同龍△66歩と攻め合われた時に龍の位置がひどすぎて大敗を喫する。

本譜の▲21竜はやむを得ない攻め合いだが、△66歩と突かれてはいわゆる「筋に入った」形と言える。歩の攻めというのは、迫ってきた歩を排除しても第2、第3の歩が飛んで来るだけなので、急所に歩が刺さると、いかなる強豪でも受けようがないのだ。

以下は後手が順調に勝ち切った。

3記事にわたって解説してきたが、いかがだっただろうか。中盤に秘められた細かい主導権争いの面白さや、終盤の入口から一気にギアを上げて引き離す爽快感を一緒に体感していただければ嬉しい。

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評価値には「水匠5」を使わせていただいています。

こちらからダウンロードできます。

手数の下は先手側からみた評価値、その下には第一候補手が表示されています。

↓↓↓棋譜並べ用↓↓↓

【紹介】

四間飛車のお手本のような指し回しでしたね。角道を止める四間飛車は昔から指されていますが、居飛車、振り飛車ともに対策が進化しています。

今回は井出隼平先生の「現代後手四間飛車のすべて」という本を紹介します。

最近は振り飛車が△94歩とついたときに▲96歩と受けるのが主流になっています。

後手が9筋を突き越せた場合は、穴熊に組ませても振り飛車は十分戦えるという評価になりつつあります。下の図が進行例です。

ここで後手は△82玉ー△72銀の美濃囲いか△81玉ー△72金のミレニアムの分岐になります。△94歩▲96歩型の場合は、△95歩▲同歩△97歩と攻めたときに後手玉への反動が大きいので△82銀ー△71金型のミレニアムに組んで9筋をカバーする駒組みを、9筋が取れた場合は△96歩▲同歩△97歩としたとき一マス分違うので、△72金の一手で済ませることが多いです。

何も考えずに穴熊に組んで、はい!安心!というわけにもいかなくなったので、居飛車はいろいろな対策を考えるようになります。エルモ囲いの急戦、左美濃、ミレニアム(トーチカ)などなど・・

「現代後手四間飛車のすべて」では振り飛車の対策が解説されています。

対エルモ囲い

(1)△43銀 (2)△64歩 (3)△54歩

△32銀型で待機すると△45歩と角交換しやすいですが、△43銀型の場合は角交換しづらいので手厚く受け止める将棋になります。

対左美濃

(1)▲57銀ー▲86歩から銀冠

(2)▲57銀ー▲36歩で、急戦あるいは△71玉をみて銀冠

(3)▲48銀型ー銀冠

対トーチカ

△53金型は▲66角を直接咎める指し方で、とても積極的です。△72銀と決めずに△72玉型にしているのも工夫です。

対▲96歩型穴熊

▲96歩型穴熊で、自然に駒組するとこの図になります。△82銀△71金と穴熊っぽく囲っていて、深くて堅く、端攻めができるのが特徴です。

それぞれの変化が詳しく書かれています。他にも指定局面がいくつかあります。難易度高めの本ですが、手の意味を理解すれば「これにはこう」とパターン化できると思います。居飛車の作戦は多いですが、一つずつ戦型の急所やコツをつかんでいけば怖くありません!

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